大嫌いなヒーロー

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思えば、いつも夕くんからだったよね。


遊びに行くのも、遊びに来るのも、いつも夕くんは私の手を引いたよね。


あの頃は、素直にそれを喜べたんだけどなぁ。

いつからだっけ、こんなにも、ひねくれちゃったのは。


・・・夕くんには、わかんないか。







ねぇ、夕くん。



そんなにも、それほどにも、ヒーローになりたいの?



君は私のことなんか、ちっとも好きじゃあないでしょう。

ヒーローになるための、ただのお手軽な道具でしょう。



私、知ってるよ。

知ってるから。



夕くんが、私のこと、好きじゃないことくらい。




ねぇ、わかってるよ。


私がバレー部の人と仲良くなったから焦ったんでしょう。

私に友達ができそうだから、困ったんでしょう。



私を助ける人が、増えるもんね。



嫉妬したんでしょう。

自分がヒーローになるための、醜い、歪んだ嫉妬をしたんでしょう。


恋人になったら、自分だけに、助けを求めると思ったんでしょう。




例え、無自覚でも、そうなんでしょう。




理解したの、夕くんが、私に好き、って言ったとき、


あぁ、違う、ほんとは、”付き合いたい”だけでしょ?

って。








ねぇ、それでも、

私は思うの。



これは、利害の一致だってね。





夕くんと付き合ったら、今みたいに、私と夕くんの関係を嫉妬してくる女の子達は減るでしょう?

夕くんの彼女ってことになったら、嫌がらせも減ると思うの。






だから、私は、君に言うよ。








「うん。私も、夕くんのこと、好き。」








だいっきらい。
 

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