大嫌いなヒーロー
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「あ?夜久、どこ行くんだ?」
今日の練習試合が終わり、合宿所に戻ってきてすぐに俺は荷物だけ置いて、不思議そうな目で俺を見る皆の流れに逆行しつつ、再び出入り口へ向かった。
もう結構遅い時間だ。急がなくてはならない。
少し焦る俺に、我がバレー部の部長が声をかけてきた。
・・・・・俺、もう3回はおまえに説明した気ぃすんだけど・・・。
バレー脳な部長に呆れていると、他の部員たちもここぞとばかりに目を輝かせて、尋問する雰囲気だ。
「あれー?ほんとだ!どっか行くんですか!?
俺も連れてってください!」
「あっ!ずるい!俺も!」
無茶言うな。
「な、なんすか!女っすか!?」
「超遠距離だな。頑張れよ。」
言うと思ったよ。
「・・・・・・・」
なんで何も言わないでこっち見てくんの!?
それぞれな反応を見せる部員たちに、俺はひとつ溜息を吐いた。
めんどくさいからまとめて答えよう。
「知り合いの家、いってきます。あ、夕飯いらないから。」
そう言ってまだ騒がしい建物の玄関の扉を閉めた。
◇◆◇
早足で不慣れな町の不慣れな道を歩く。
ああ、もう、急いでるのになぁ。
困った奴らだ。
そう思いつつ、口からは笑いが零れた。
やばい。今俺すごい怪しい人だ。
分かっているが止まらない笑みを押さえていると、小さいころの記憶にある苗字の書かれた表札が見えた。
「あ、あそこの家っぽい。」
ひとりで呟く。
数歩あるいて、玄関の前に立つ。
もう一度表札を確認。うん、間違いない。
あとは、インターフォンを人差し指で押すだけ____
そこまできてふと不安がよぎる。
思わず指の動きも一緒に止めてしまった。
「なまえちゃん、あれ以上可愛くなってらどうしよう・・・。」
思い浮かぶのは、記憶の中にいる可愛い可愛い女の子のこと。
うーん、と考え込むものの、これじゃほんとに怪しい人だし、待たせるのも悪いので、やけに重たい指をもう一度動かした。
ピンポーン、
ありがちなチャイム音が鳴って、中から足音が近付いてくるのを感じた。
◇◆◇
「な、なぁおい!研磨ぁ。し、知り合いって、女かなぁ?か、彼女じゃないよなっ!?」
「・・・・知らない。どもり過ぎ。」
「だだだ、だってっ、おまえも気になるだろ!?」
「別に。」
「俺は気になんの!!」
「・・・・・・・てか、なんで俺に聞くの・・・。」
「えっ。駄目なのか!?」
「ぶっちゃけ・・・・、ちょっと遠慮して欲しい。」
「けんまああぁあぁぁぁあ!!!!!!」
「山本うるさい!!」