大嫌いなヒーロー
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「なんで今日こんなに晩ご飯豪華なの?」
「お客さんが来るんだもん!」
「あー、もりりんさん?」
「そうそう!」
あ、晩ご飯も食べてくんだ。まぁいいけど。
・・・・なんか上から目線になった。
というか、私もりりんさんの名前知らない。
流石に高3男子をもりりん呼びはきつい。
「あのさ、お母さん、もりりんさんの、___」
そう言いかけたときだった。
ピンポーン
なんか明るいイメージのあるごく一般的なインターフォンの音が鳴る。
これ連打されるとうざいよね。
「あ!来たのかしら!噂をすれば!」
「・・・・・・」
今日の夕方からほとんどもりりんさんの話しかしてないけどね。
なんでも強引にこじつけたがるお母さんに呆れていると、その呆れられた本人が、私のことをやけに輝いた目で見ているのに気付く。
な、なんだい?
「さあ!なまえ!早く出てあげて!」
「え!?私?」
「もちろんよ!」
「わ、私、知らない人とかすごい駄目なんだよ?」
「何を言ってるの?今さら。知ってるわよ〜なまえのお母さんなのよ?」
「・・・・・・そうだね。」
母は強い。分かってて言ってる。
私は仕方なく玄関に小走りで向かった。
◇◆◇
「はーい。」
そう言ってがちゃがちゃ音を立たせながら私は玄関の鍵を開け、扉を開ける。
瞬間、私は目を見開く。
・・・・・・・・・い、イケメンだあ!!
そう、うちんちの玄関ポーチに立っていた真っ赤なジャージの男の子は、なんじゃこらあああああと叫びたくなるくらいイケメンであったのだ。
誤解されないように言っておくが、私に顔の良し悪しなどわからない。
精々、清潔だったらいいんじゃない?くらいの価値観しか持っていない。
どの顔がかっこいいのか、なんて聞かれても答えられない。
まあつまり、イケメンの基準がよくわかっていないのだ。
しかし、何故そんな私がこんなにもはっきりと目の前の人物をイケメンと断言できるのかというと、どこがイケメンなのかと言うと、
この少年の、雰囲気である。
この優しげな瞳!しかし芯を通していそうな眉!爽やかな印象を与える短髪!ほどよい体つき!
なんか、あれだ。スガさんに通じるものがあるというか、全身から良い人オーラが滲みでているというか。
一目で、あ!イケメンさんや!と理解してしまった。
なんだろう、性格的なもの?彼と接した記憶だなんて、頭の片隅にも残ってはいないが。
もりりんなんてふざけたあだ名付けてしまってごめんなさいごめんなさい。ほんの出来心だったんです。いや実は覚えてないけど。もう土下座したいです。ほんとすみません。
ひたすら脳内で謝り倒してからしばらくして、やっと我に還る。
やばい。
得意の脳内ワールドを展開していたせいでもりりんさんのことすっかり忘れてた!
お、おこっ、おこってるよね?
イケメンさんとは言えど怒るよね?
内心超ビビリながらもりりんさんを見上げると、意外なことに、もりりんさんは私を見たまま大きく目を見開いていて、微動だにしていなかった。
なんか、さっきまでの私みたい。
そんなかんじの考えが一瞬頭をよぎって、失礼すぎんだろ。と自分をはったおしたくなった。
「あ、あの、中、入ります?」
とりあえず、こんなところにいつまでも突っ立っているのは駄目だろう。
そう当然の思いがやっとのことで湧き上がり、勇気を出してもりりんさんに声をかけた。