ねこ

□神官
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神官様のことくらい、そりゃあ知っている。

一応これでも城の女官見習いだし、そうでなくても、煌帝国の国民ならば、誰もがその存在を常識的に知っている。


神官様の噂はいろいろある。

悪逆非道だの、鬼だの、狂人だの、人格破綻者だの、イケメンだの。

まとめるとつまり、性格の悪いイケメンなんだな、と勝手に想像をしていた。



もちろん、私みたいなものが、お顔を拝見できるわけがないけれど。


けれど、

誰も、彼が神官様だなんて、考え付くはずもなかっただろう。





****

それを知ったのはついさっき、

今日も見習いとして仕事に精を出していたときのこと。


中庭で彼を見つけた。
お金持ちっぽかったし、城にいること自体は気にならなかったのだが、


浮いていた。


・・・アレ?

人って、浮けるっけ?
いや、浮けない。


嫌な予感はしたものの、
うん、実は魔導士だったんだな!
と自分を納得させていた。

しかし、


「神官さまっ、王がお呼びです!」



1人のやけに大声で彼を呼んだ兵隊により、私は衝撃の真実を知ってしまったのでした。

ちゃんちゃん。





・・・ちゃんちゃんじゃねぇし。

え、どうすんのこれ。
私普通に超生意気だったんだけど。
不敬罪とかになるの?




「神官さまっ!」

また、兵士が大声を出した。



「あー、わかってるっつぅの。」

そう言って、彼はさらに浮き上がる。


そうすると、まぁ、二階にいる私と目が合ってしまうわけで。



「え、」

「あ、」


驚いた顔をする彼、

とっさに顔がこわばる私。




そんな私を見て、彼は、

いたずらがばれた時のような顔で、悲しく、笑った。



ああ、もう、彼との楽しい時間は来ないんだ、とわかってしまった。





泣きたくなった。
 

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