ねこ
□神官
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神官様のことくらい、そりゃあ知っている。
一応これでも城の女官見習いだし、そうでなくても、煌帝国の国民ならば、誰もがその存在を常識的に知っている。
神官様の噂はいろいろある。
悪逆非道だの、鬼だの、狂人だの、人格破綻者だの、イケメンだの。
まとめるとつまり、性格の悪いイケメンなんだな、と勝手に想像をしていた。
もちろん、私みたいなものが、お顔を拝見できるわけがないけれど。
けれど、
誰も、彼が神官様だなんて、考え付くはずもなかっただろう。
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それを知ったのはついさっき、
今日も見習いとして仕事に精を出していたときのこと。
中庭で彼を見つけた。
お金持ちっぽかったし、城にいること自体は気にならなかったのだが、
浮いていた。
・・・アレ?
人って、浮けるっけ?
いや、浮けない。
嫌な予感はしたものの、
うん、実は魔導士だったんだな!
と自分を納得させていた。
しかし、
「神官さまっ、王がお呼びです!」
1人のやけに大声で彼を呼んだ兵隊により、私は衝撃の真実を知ってしまったのでした。
ちゃんちゃん。
・・・ちゃんちゃんじゃねぇし。
え、どうすんのこれ。
私普通に超生意気だったんだけど。
不敬罪とかになるの?
「神官さまっ!」
また、兵士が大声を出した。
「あー、わかってるっつぅの。」
そう言って、彼はさらに浮き上がる。
そうすると、まぁ、二階にいる私と目が合ってしまうわけで。
「え、」
「あ、」
驚いた顔をする彼、
とっさに顔がこわばる私。
そんな私を見て、彼は、
いたずらがばれた時のような顔で、悲しく、笑った。
ああ、もう、彼との楽しい時間は来ないんだ、とわかってしまった。
泣きたくなった。