ねこ
□少女
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きっかけは、些細なこと。
猫がいた。ただそれだけだ。
なんとなく、触ったことのない、聞くところによるとふわふわらしい、猫という生物に触れてみたかった。
地面にしゃがみ、辺りを見回しながらそっと手を伸ばして、猫に、触れてみる。
・・・ふわっふわじゃねぇか!!
予想以上に気持ちの良い触り心地に、思わず頬がゆるむ。
動物、というものは殺したことしかなく、可愛がるのは、これが初めてのことだった。
俺が殺した、動物も、人間も、こんな風に暖かかったんだろうな。
当たり前のことが、頭をよぎり、変な気分になった。
もやもやしていると、
「えっと・・・そのぉ・・・ど、どちらさまでしょうか?」
変な女が話しかけてきた。
そういえば、ここは女官寮だと気づく。
あ、この女も俺の顔見たら、怖がるんだろうな。
なんて柄にもないことを思っていたが、
「こ、ここには、お金になるものは、ありませんよっ。いるのは可愛い、または綺麗な女官だけですっ」
杞憂だった。
あほだった。
「・・・俺の名前、知ってるか?」
「し、知りませんよっ、しょ、初対面でしょう?」
まじか。
てかびびりすぎだろ。
なんだか、世の中には、おもしろいヤツがいるんだなぁ。
楽しくなった。
「不審者じゃねえよ。」
そう言う俺は、珍しく笑顔だった。