短編
□小さな彼に、
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「おはようっなまえちゃん!」
「お、おはよう、翔陽くん。」
日向翔陽くんは、私の幼馴染です。
幼稚園も、小学校も、中学校も、このたび高校まで一緒になった、腐れ縁、というやつです。
私たちは、本当に幼い頃から時間を共有してきたのか、と疑いたくなるほど性格が正反対です。
少し不器用だけど、何にでも一生懸命で頑張りやで、明るく元気な翔陽くん。
何でもそこそこできるけど、頑張りたいことがなくて、人前に出るのが苦手で引っ込み思案でおとなしい私。
今まで仲良くしてこれたのがすごいと思います。
「でなっ、それで、田中先輩がー、」
「へぇ、すごいんだね。」
今年はクラスも一緒になったので、こうやって教室でもお話ができます。
家も近くて、学校も一緒に行けたら、とか考えていたけれど、山を越えていく自転車通学は、さすがにキツイので無理です。(電車通学をしています。)
「あ、1限目、移動教室だ。一緒にいこっなまえちゃん!」
「うん。」
私は友達を作るのが下手で、クラスにあまり仲が良い女子がいません。
そんな私と、翔陽くんはいつも一緒に居てくれます。
とても、良い友達、です。
私は、友達とは、思ってません、けど。
だって私は、ずっとずっと、翔陽くんのことが、好きなんです。
「ごめんっ、なまえちゃん、俺今日昼休み練習しにいくんだっ」
「あ、そうなんだ。全然いいよ。練習頑張ってね。」
そう言うと、翔陽くんは、にこっと笑って、頑張る!と言って走って行きました。
・・・私は複雑な気分で、一人でお昼を食べます。
最近、一緒にいることが、減ったなぁ。
ふと思いました。
バレー、かぁ。
何だか翔陽くんを取られてしまったみたいです。
はぁ、
と一人ため息をついてしまいます。
翔陽くんに、告白、してみようと思ったことは何回もあります。
でも、これで振られたら、多分振られるだろうけど、私は、一人ぼっちになってしまうんです。
それじゃあ、今のままでいいや、と私思っています。
キンーンコーン....
予鈴が鳴って、翔陽くんが帰ってきました。
「翔陽君、」
「ん?なにー?」
「今日、放課後バレー部の練習、見に行っても、いい?」
今日は少し頑張ってみました。
緊張してカタコトになってしまいましたけど。
もちろんいいよ!ぜひ来てよ!翔陽くんのいつも通りの明るい言葉に、安心しました。