短編

□やっぱすき。
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その人を、つい目で追ってしまう。


その人と目が合うと、恥ずかしくってそらしてしまう。


その人の声を聞くだけで、幸せな気分になる。


その人と話してるときは、心臓がうるさい。





これって、恋でしょうか?




一人、日直の仕事の黒板消しをしながらもんもんと考える。


友達に言ったら、

恋だよ!絶対絶対絶対絶っっっっ対

、と引くくらいの絶対をいただいてしまった。



で!?相手は!?

すごく詰め寄られた。
だからあんまり話したくなかったんだ。


やんわりごまかしておいたけど、



だって、

その相手が、問題だ。



いつも教室の隅っこにいて、

いつもなんかおどおどしてて、

いつも自己主張ができなくて、

いつも、人に伝わらなくて、伝えられなくて、伝えようとしなくて、

いつも幼馴染らしき先輩に引っ張れていて、



ただ、ゲームとバレーがすんごく上手い。



そんな女子を苛つかせる系男子、孤爪研磨くんが、私は好きらしい。



ぶっちゃけ彼の良いところだなんて、私もバレー、ゲーム、くらいしか思い浮かばない。

あまり良くできた人間だとは思わない。




1ヶ月前、


友達に、

「黒尾先輩見に行こーよ!」


と言われて特に用事が見当たらなかったから、暇つぶしに行って見た。


しかし、その黒尾先輩とやらには、

あー、なんか孤爪君迎えにいっつも教室来てるヒトね。

だけのことしか思えなかった。


キャーキャー騒がしい体育館で、特に応援する人もいない私は、同じクラスの孤爪くんを探してみることにした。


確か、バレー部だったよなぁ。



・・・・・お、いたいた。



やっぱりおどおどしている彼を見て、頑張れーくらいの気持ちで見ていた。



顧問らしき人の号令がかかって、練習が始まった。

黄色い声で耳が痛い。


どうやら今日は、部内対抗戦をやるようだった。

皆粛々と準備をしている。






ピーッ


笛の音で、始まった。




その世界は、すごい、としか言いようがなくて。






「孤爪くん・・・かっこいい・・・・・」


自然と口から言葉が漏れた。



いつもあんなに冴えないくせに、反則だ。



どうやらこのとき、打ち抜かれてしまったようで。
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