短編

□春歌さまへ
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「アリババくん!」

私はいつも、精一杯の勇気を出して、鍛錬が終わったであろう少年、アリババくんに声をかける。



「おー、なんだ?」

彼の目が、こちらを向いて、胸が高鳴った。


「えへへ、なんとっ、今日はサンドイッチを作って来ましたー!」

そんな不純な心が、アリババくんに伝わらないよう、明るく元気を装う。



「おお!ほんとか!やったっ!!」

そんな私に、アリババくんは、満面の笑顔を見せてくれた。


私は、私に向けてくれるこの笑顔が見たくて、見たくて、まるで彼の恋人であるかのように、毎日修行後の彼に差し入れをするのだ。



「修行お疲れ様〜。」

段々速くなっていく鼓動の音を隠して、私はアリババくんに笑いかける。



「おぅ!いつもありがとな!」


「全然大したことないよー、アリババくんがいつも頑張ってるところ見てると、私も何かお手伝いがしたくて。」


うわぁ、私、なんて真っ赤な嘘を吐くんだろう。

自分の言った言葉に押し潰されそうになる。



だけど、



「・・・・・おまえ、良いやつだなぁ。」



あなたがそう言ってくれるなら、私は、私のこんなに醜い心を許せる気が、するんだ。


なんて。





「うわぁーっ、うめぇ〜!!」


「気に入ってもらえて良かった。」


「おぅ!すげぇ気に入った!!」


ああ、もう本当にアリババくんは、私の心を掴む、天才なんだから。


でもね、









「また明日もなんか作ってきてくれよなっ!」


全部食べ終わって、そう輝かんばかりの笑顔で言うアリババくんに、私は小さく微笑った。




でもね、私だって、アリババくんの心、掴めるんだよ?




ほら、まずは、胃袋から、ってね。
 

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