短編

□小川アヤさまへ
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「なまえちゃーん!!」


「わっ、アラジン、どうしたの?」



大声で私の名前を呼んで、弾丸のように突進してきて、私に抱きついたのは、私の友人、アラジンだ。




「えへへ、なまえちゃんに会いたくて、急いで来ちゃった。」

私の腰から腕を放し、輝かんばかりの笑顔を向けてくる。



「アラジン・・・。」




わあああ、何この天然タラシ!
心臓が持たないからぁぁ

アラジンの言葉に真っ赤になる。


アラジンと知り合いになってからというものの、私は心臓に悪い日々を送っている。




そんなりんごみたいな私を見てアラジンは、


「なまえちゃんは可愛いねぇ。」


と愛おしそうに言った。

だから、それが、心臓に、悪い。



少し悔しくなって、言ってやった。


「アラジンの方が、可愛いよ。」


本音です。

身長も私の方が若干高いし、アラジンの顔や仕草の方が、可愛いと思う。




「むー・・・・、それはあんまり嬉しくないなぁ。」


そんな私の言葉に、アラジンは不満そうだ。



「なんで?」


素直にわからなくて、質問してみる。





「・・・・・なんでって、そりゃあ、僕も男の子だし・・・・・」

急にアラジンの歯切れが悪くなる。


「?」


なにかもごもご言っているけど、よく聞き取れなかった。


じー、っと見つめると、少しアラジンの顔は赤くなり、
うぅ、と困ったような声をあげた。


そして、


「うー・・・・、あー・・・・、

ないしょっ!」



「ええ!?」

結局教えてくれないの!?
ついに口を開いたと思ったら・・・!
残念な気持ちが私をおそった。

まぁ、嫌なら良いけどさー。
私には言いたくないのかなー。


しょげているのが伝わったのかもしれない。




私の真正面に立っていたアラジンが、がばっ、とまた抱きついてきた。


アラジンにしたら対したことは無い行為に、いちいち私の体は熱くなる。



「あ、アラジン・・・?」


どうしたの、と言おうと口を開こうとした。




その瞬間、私の頬に何か熱いものが、掠った。



それが、アラジンの唇だった、ということに気付いたときには、もう、アラジンの体は私の体から離れていた。




「なまえちゃん。」



真っ赤な私に、アラジンがしっかり目を合わせて呼びかける。










「いつか、かっこいい、って言わせてやるからね。」



それだけ言うと、アラジンはくるりと背を向け、走って去っていってしまった。








そんなこと、知ってるよ。


ぽつりと中に放った言葉は、誰にも届くことなく、空気に溶けた。
 

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