短編
□きらいだけどすき
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わたしは今日も彼に愛を囁きます。
「及川くん、」
「なに?」
苗字で呼びかけたわたしに対し、彼の双眸は冷たい。
「好きです。」
あっさりと口にしてみる。
「ふーん。あっそ、知ってるよ。
俺は君以外の世界中の女の子のことが大好きだよ。」
及川くんもあっさりと返した。
「うん、一万年くらい前から知ってるよ。」
少し冗談を混ぜてみた。
「笑えないね。君だと。」
どうやら不評。
「・・・・・・及川くん、好き。」
もう一回言ってみたり。
「俺は君のことなんか嫌いだよ。」
・・・・・・・。
「・・・・・、ねぇ、及川くん、」
「なに、まだ何かあるの?」
「いや、耳、赤いよ?」
そう口にしたところ、今度は及川くんの顔全体が、りんごみたいに真っ赤になった。