短編
□月島
1ページ/2ページ
月島にチョコを渡して告白する
「つ、月島蛍くん、好きです、付き合ってください!」
そう言って、ばっ、と月島くんに手作りのチョコレートを渡す。
頑張って綺麗にラッピングもした。
手作りは重いかなぁ、とも思ったけど、やっぱり心を込めたチョコを渡したかった。
よく優等生だとか言われる私だから、学校にお菓子を持ってきたという時点で、すでに緊張して倒れそうだったが、
さらに告白という、交際申し込みというかなりの恥ずかしさにも耐えて、なんとか立っていた。
「・・・・・・。」
月島くんは、黙ったまま、そのチョコを受け取った。
◇◆◇
好きになった理由は、簡単だった。
私は、ある日、ある休み時間、黒板が汚れていることに気付き、黒板消しで拭おうとしていた。
しかし、なかなか高い位置にあり、手が届きそうにない。
周りを見渡しても、何しろ休み時間。
休み時間まで黒板清掃に精を出す生徒なんて、私くらいのものだった。
「・・・・・・(どうしよう)。」
このままだと、次の授業のときに怒られるのは日直の子で、でも、教室内に日直のこの姿は見えない。
内気な私は、あまりしゃべったことのない人に助けを求めるなんてことはできなかった。
そんなとき、
すっ、
後ろから、もう1つあった黒板消しを持った手が伸びてきた。
そしてそのまま、私の頭を飛び越えて、いとも簡単に黒い中に浮かんだ汚れをふき取った。
「・・・・・・・。」
そのときも、月島くんは無言だった。
◇◆◇
我ながら、単純だと思う。
でも、好きなんだ。どうしても。
月島くんの目を、まっすぐ見つめる。
月島くんの、あまり開かない口が、かすかに開いたとき、
「あー!チョコだー!ツッキー告白されたの!?」
空気が読めない山口くんが乱入してきた。
お願い、空気読めない君に頼むのもなんだけど、空気読んで。
「・・・・・・山口、」
ほら!月島くんも怒っちゃってるよ!
もうこんなの振られちゃうじゃん!馬鹿!
少し涙目になる。
「よかったね!ツッキー!
ずっと前から、みょうじさんのこと好きだって言ってたもんね!おめでとう!」
「え?、それって、どういう、」
瞬間的に月島くんの体が固まる。
「え、あれ?、あ、まさか、まだ、だった・・・?」
「・・・・・・山口、おまえ、もうどっか行ってろ。」
「ご、ごめん!ツッキー!」
ぴゅーん、と山口くんは去っていった。
残されたのは、気まずい空気となった、私たち。
「・・・・・・つきあって、くれる?」
そう、最初に言ったのは、私の手作りチョコレートを、大事そうに持つ、月島くんだった。
「はい!よろしくお願いします!」
真っ赤な月島くんに、真っ赤な私が、精一杯の返事をした。