短編
□アラジン
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信号組が集まる中アラジンにチョコを渡す
「チョコが食いてぇ。」
いつも通り、広場に集まり、3人でとりとめもない話をしているとき、突然そう真顔で言ったアリババは、たいそう哀れに見えてしかたなかったそうな。
「・・・?、シンドバットさんとかジャーファルさんとかが、なんでか今日はいっぱい持ってましたよ。分けてもらったらどうですか?」
「こんちくしょう!!」
男の嫉妬は醜かった。
「?」
「ふふ、モルさん、アリババくんはね、女の子からチョコが貰いたいんだよ。」
「なんでですか?」
「今日が!バレンタインだからだよ!」
アリババは必死で訴える。
あわよくばモルジアナにチョコを貰おうとしているのがバレバレだ。
「今日はバレンタインデー、っていってね、女の子が好きな男の子にチョコとか、いろいろ贈ったりする日なんだよ。」
「そうだったんですか・・・、だからピスティさんに料理をしないか、とお声をかけてもらえたのですね。」
モルジアナは、納得したようだ。
「作ったのか!?」
アリババの目が、くれ!と輝いている。
「いえ、不器用なので今回は遠慮させてもらいました。」
「ばかっ!!」
その目から涙が滲んだ。
「アリババくんは、周りの男の人がいっぱいもらってるのに、自分だけもらっていないから、悔しいんだね。」
「アリババさん・・・。」
「哀れむなよ!
同情するならチョコくれよ!」
「まぁまぁ、アリババくん、きっとそのうち良い事あるよ。」
「元気を出してください。」
「・・・・・・おまえら、」
二人でアリババを慰めていたら、どうやらなにか感動してくれたようで、アリババの状態が回復してきた。
そんな様子に、単純だなぁ、と笑いあう、バレンタインにしては、友情多めの時間だった。
ふと、アリババが、今気付いたかのようにアラジンに問いかける。
「なぁ、そういやアラジンは、チョコいっぱい貰いたい、とか思わねぇの?」
「僕かい?僕はね、」
アラジンが何か言いかけたときだった。
「アラジン!」
ひとりの少女がアラジンに駆け寄ってきた。
少し頬が赤い。
「なまえちゃん!」
アラジンも、幸せそうなとびっきりの笑顔で、こちらもまた、頬を赤くして、その少女を迎え入れる。
「え、ちょ、なに?どゆこと?」
「あ、なまえ、来たんですね。」
「え?、知り合い?」
アリババが異様に動揺するのに対し、モルジアナは平静である。
「おい、アラジ・・・・・・、」
アリババがなんとかアラジンに声をかけようとするが、
「あの、アラジン、チョコ作ってみたんだけど、食べてくれる?」
「もちろんだよ!すごく嬉しいよ。
ありがとう、なまえちゃん!」
「美味しくなかったらごめんね・・・?」
「なまえちゃんの作ったものだったら何でも美味しいに決まってるよ。
なまえちゃんは可愛いなぁ。」
「もうっ、アラジンったら!」
「ふふふ。」
・・・・・・完全に2人の世界でした。
「バレンタインとか消えればいい・・・・。」
「アリババさん・・・(哀)」
そして、そんなアリババの死んだ魚の目など気にせず、アラジンがさらに追い討ちをかけた。
「そういえばアリババくん、さっきの質問だけど、
僕は、ひとりの娘からもらえたら十分だから!」
腕には可愛らしい少女を抱きながら。
「・・・・・・・・・・・・・・どうぞお幸せに。」
アリババはそれだけ言うのがやっとだったとか。