短編
□白龍
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バレンタインを知らない白龍に夢主がチョコを渡して、その後で
白龍がバレンタインの意味を知る
私にはお慕いしている方がいる。
今までさまざまなアプローチをするも、その方が天然なのか、わざとなのか、ちっともうまくいかない。
そのアプローチがひょっとしたら、まわりくどかったのかもしれない。
ということで、今日はバレンタインなので、思い切って、勇気を出して、ハート形のチョコを渡してみようと思う。
「白龍さん!これ、もらってくれませんか!?」
ばっ、
と可愛らしい箱に入れたチョコを、白龍さんいむかって突き出す。
どんな反応が返ってくるんだろう、
どきどきどき、胸が高鳴る。
さすがにこれで、思いに気付いてもらえる程じゃないかもしれないけど、意識くらいはしてもらえるようになるよね・・・?
「お菓子、ですね。
なまえ殿が作られたのですか?」
「は、はい!」
喜んでくださりますように!
そんな私の強い願いは、次の瞬間何とも消化不良に終わることになるのだった。
「ありがとうございます!」
白龍さんは、ぴくりとも表情を変えずに、爽やかに言ったのだった。
◇◆◇
白龍さんとそのまま笑顔で別れてから、私は重い溜息を吐いた。
悪い反応じゃないんだよ?
決して悪い対応じゃあなかったよ?
でも、良くもなかった。
なんと言うか、何かに発展する可能性が0というか。
失敗とも、成功とも言えない今回のアプローチに、少し気が沈む。
あれでもし、本当に何も気付いていないのだとしたら、いろんな意味で恐ろしい人だなぁ。
だけど、こんな気分になるのも、そんな人を好きになった私の責任だ。
こうなれば、とことん、この恋に全力を尽くしてやろう。
「明日からも、頑張ろう!」
強い意志を込めて、空を見上げた。
◇◆◇
「・・・・白龍、おまえ、それ、持ってるやつ、チョコ?」
「あ、アリババ殿。
これですか?なまえ殿にいただきました。
家庭的でお優しい方なんですね。」
「うおー、いいなー。」
「でも、なんで突然くださったんでしょうね?」
「・・・・なんで、って、そりゃーおまえ、バレンタインだからだろ。」
「ばれ・・・?」
「なんだ、知らなかったのか。
なまえが可哀想だな!」
「えっ?なっ、なんでですか?
俺、何かしてしまったんでしょうか?」
「落ち着け落ち着け。
いや、だってさ、バレンタインって、好きな人にチョコあげる日じゃん?」
「・・・・・・・・・・・・え?」
白龍の体が、一瞬にして固まった。
「?、おーい、どーした、白龍、顔すげぇ真っ赤だぞ?」
アリババの暢気な声に、返事ができるものは、いなかった。