短編
□アリババ
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学パロで夢主が逆チョコを貰いまくるのに焦るアリババ
いらいらいらいらいらいら。
「え?チョコ?くれるんですか?
あ、ありがとうございます。シンドバット会長。」
「いやぁ、可愛いなまえのためなら、このくらいなんでもないさ!」
いらいらいら、
シンドバットさんは何でそんなにでれでれしてるんだ!
今日はバレンタイン、俺、アリババ・サルージャ高等部一年は、気にしまいとしても斜めみっつ前の席に、どうしても目がいってしまうのだった。
「シン!生徒会長の仕事がまだまだ残ってるんですよ!何してるんですか!」
「げっ!ジャーファル・・・。」
相好を崩しっぱなしで、俺達の教室に居座るシンドバットさんに、鬼のようなジャーファルさんがつかつかと歩み寄る。
「げっ、じゃありません!早く戻る!」
「・・・・わかったよ・・・。じゃあまたな!なまえ!」
「は、はぁ。」
やっと帰るか、そう思った時、
「あ、待ってください、なまえ、」
ジャーファルさんがくるりとなまえの方を向いた。
「はい?」
「今日、バレンタインでしたよね。
これ、よかったらどうぞ。」
そして、ラッピングされた包みをなまえに渡した。
いらっ。
「えと、ありがとうございます!嬉しいです。」
「いえ、私が作ったものですから、お口に合うか分かりませんが・・・。」
「手作りなんですか!?わざわざすみません!」
「良いんですよ。
また、感想を聞かせてくださいね。では。」
そう言ってジャーファルさんはかっこよく去って行った。
いらいらっ
ジャーファルさん生徒会書記だよな?
チョコなんて持ってきてもいいのかよ!
生徒会長が堂々と持ってきてる時点でなんとも言えないけど!
しかもなんなんだ、あいつの態度は!
いちいち嬉しそうにしやがって!
そんなんだからうちの学校の男どもが期待しちまうんだよ!
そこまで心の中で叫び、はっ、とする。
いや、なんで俺があいつのことなんか気にしなきゃ駄目なんだよ!
もう知らねぇよ!俺には関係ないし!
◇◆◇
・・・・・・・と、俺は決意をしていたのだが、
「なまえおねいさん、これあげる!」
「アラジン君、わざわざ初等部から来てくれたの?」
「・・・・・・これ、もらってくれ。」
「マスルール先輩!
あ、クッキーですか?美味しそうです!」
「おい!なまえ!これやるよ!」
「わっ、ジュダル君、投げたら駄目だよ。」
「なまえ〜、僕のチョコもらってくれる〜?」
「これ、超高級店のだ・・・。ありがとう、紅覇君!」
「なまえ、これをおまえにやろう。」
「紅炎先生、あ、これ紅覇君とおんなじ店のやつですね。
さすが兄弟ですねぇ。」
「!?(かぶった、だと・・・。)」
「なまえこれを貰ってください。」
「わぁ、友チョコだね!ありがとう、モルジアナ!」
・・・・・・・・・・なんなんだよ!この学校は!というか、ここの生徒達は!
バレンタインの趣旨が覆ってんじゃねーか!
いや最後のは良いけど!
なんか俺がなまえにチョコ渡してないのが逆にヤバイみたいになってんじゃん!
俺今日チョコとか持って来てねーよ!貰う気満々だったよ!誰もくれなかったけど!
「アリババ君?どしたの?」
「おぇ!?・・・・あ。いや、なんでもねぇ。」
気付いたらなまえが俺の座っている席の前に立っていた。
「あー、もう客はいなくなったのか?」
「うん。もう昼休み終わるから皆帰ったよ。」
「・・・随分、いっぱいチョコもらってたな。」
つい、険のある口調の言葉がもれる。
・・・・・なんか、俺、嫉妬してるみてぇだな。
心の内で、一瞬何かの核心に触れそうになって、少し驚いて、その思考を遠ざけた。
「うん。最近って、ほんとに逆チョコ流行ってるんだね。びっくりしちゃった。」
流行ってるからおまえにチョコ渡してんじゃねぇだろ、
と思わず言いそうになって、慌てて口を噤んだ。
「・・・・・言っとくが、俺は何も持ってねぇぞ。」
皮肉めいた言い方をしてしまい、
自分がひどく幼稚に思えてくる。
そんな俺に、なまえは、
「うん、いいの。」
と言った。
「・・・・は?なんで?」
我ながら間抜けな声。
「だって、」
そこでなまえは少し逡巡する。
でも、意を決したように、深く息を吸い込んで、
「私が、アリババ君に、あげるから。」
そうはっきりと告げて、小さな箱を俺に差し出した。
「・・・・・・・え?」
なまえが、俺の心の、核心に触れた。