短編

□烏野高校バレー部
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烏の高校バレー部が坂ノ下商店でチョコレートフォンデュ




「なぁ、龍、」

「なんだよ、ノヤっさん、」

「バレンタイン、って、なんのためにあるんだろうな。」

「んな言葉聞いたことねぇよ。うん。ほんとに何ですか?ソレ?」

「存在意義がわからない。」

「なんでノヤっさん泣きそうになってんだよ!?
結構クラスの女子からとかもらってたろ!?」

「ああ、先輩からも、後輩からももらった。」

「俺の目の前から消えてください。」

「潔子さんからいただけないのであれば、こんな日はいらねぇ!」

「気持ちは分かるけどよー?
・・・・・この贅沢者が!!」



「はい、そんな悲しい野郎ども、俺らからチョコレートやるぞー!
ありがたがれよ!」


部活終了後、鵜飼監督から、着替えるバレー部部員達に声がかかった。



「え!まじで!?やったー!」

「ありがとうございます!」

「ラッキーだな。」


体育館にいる食べ盛りの生徒は、各々嬉しそうな反応を見せる。

うん、私も嬉しい。



「「男(しかもいい歳した)からなんて・・・!」」


そしてこの2人はしつこい。



「潔子先輩もつくるの手伝ったんだって。」


しょうがないから、ボソッと聞こえるように言う。



「監督!!、どこで貰えますか!いつもらえますか!何が貰えますか!」

「むしろこっちが何かお礼した方がいいんスかね!!」


ばりばり元気になった。

効果絶大。


ごめんね、潔子先輩と私、ほんとは器具とか準備しただけなんだ。
あとはタケちゃんと坂ノ下のおばさんオンリーなんだ。



◇◆◇



「ちょ、チョコレートの泉だぁぁあー!」

「・・・・・日向君、それはちょっと大げさじゃない?」

「だって、すごい!みょうじ先輩!」


はいはい、と笑う私。

日向君は可愛いなぁ。
今すぐ弟になってほしいなぁ。
とか考えてます。


「こんなの食べたことねぇ・・・・・!」


影山君もわくわくそわそわしてます。

目が子どもみたいに輝いていて、これもまたなんとも可愛らしい。



「ハン、馬鹿丸出しだね。」

「ほんとだな、ツッキー!」


「なっ!なんだとー!!」

「あ"?」


「月島君・・・・・」


また楽しんでるし。

面倒くさい趣味してるなぁ、ほんと。
うーん、可愛くないわけではないけどね。





「おいしいです。ありがとうございます、先生。」

「いやぁ、澤村君にそう言われると嬉しいなぁ。」

「すみません、こんなに美味しいものいただいちゃって。今度またお礼しますね!」

「そ、そんな!いいんだよ、菅原君!」


おお、こっちではタケちゃんが褒め殺されておる。
さっきの一年とは打って変わって大人だなぁ。
さすが先輩達。かっこよい。



「旭さん!!!食べてますかー!!!!?」

「わぁ!西谷・・・・!」

「あ!あんまり食ってませんね!!
またどうせ、バレー部に途中から戻ってきた俺がこんな皆のために用意されたものいっぱい食べたら迷惑になるんだろうな・・・、とか考えてるでしょ!」


西谷・・・!なんて失礼な!


「え!な、なんでわかって・・・!?」


大当たりかよ!


「ははっ、旭さんは見てればわかりますからねぇ!」

「なっ、田中もか!?」

「というか、皆なんとなくわかります!」

「えぇ!」


うーん、ここもまだまだ無邪気だなぁ。

微笑ましい。

なんだか皆のおばあちゃんになった気分で騒がしいチョコレートフォンデュ会場を見ていた。



そんなとき、ふと思う。


このメンバーで、このパーティーをするのは、これが、最初で最後だ。

そんなことに、つい涙ぐみそうになったけど、なんとかこらえる。



「?、みょうじ、どうしたの?」



ピックにさした苺を持った縁下が声をかけてくれる。



「・・・ううん、なんでもない。
ただ、

・・・・・また来年も、できたらいいな、って。」



「・・・・・・うん。」




私の言っている意味がわかったのか、縁下も神妙な顔つきになった。

なんだかしんみりさせてしまって悪いと思い、そんな雰囲気をごまかすべく、マシュマロをひとつつまんで、口に入れた。
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