短編

□ジュダル・白龍
1ページ/2ページ

ジュダルにお詫びチョコを渡して、それを目撃した白龍が拗ねる



今日は、バレンタインデー。

私もチョコレートの入った包みをひとつ持って、他の女の子たちと同じように、城内を歩く。


なかなか力作のチョコ。

これは、神官様への、お詫びチョコだ。

うん、あのどえらいこととしちゃった件のね。


結局神官様ひとりにしか作らなかったから、すごくクオリティが上がったのだった。


は、白龍様には、来年!来年渡すから・・・!
今年はまだ、心の準備ができないから!

勇気を出せなかった弱虫な自分に、言い訳をする。


無駄としか思えない心の葛藤をしながら、私は神官様を探す。



あ、早速、発見。木の上だ。



「し、神官様・・・!」

「・・・・・あ?、おまえ、」



私の顔をみた瞬間、苦々しい顔になる神官様。
だろうね!

それでも一応気から降りてくれる。
結構良い人だと思う。

喜ばれるかわからないけど、とりあえず、貰ってもらいたい。



「これ、貰ってくださいませんか?」

「なんだ、これ?」



ひょい、と神官様は、チョコレートの入った包みを手に取る。



「チョコレート、です。今日はバレンタインなので。」

「・・・・・・・。」

「あ、甘いもの、きらいでしたか・・・?」


無言な神官様に、不安が募る。



「・・・いや、おまえ、もうあん時のこと気にしなくていいからな?」

「・・・え?」



そんな私に降ってきたのは、意外な言葉でした。



「べ、別にあれだからなっ!、俺まで変な気分になっちまうから、迷惑だからなんだからなっ!」


聞いてもないことを、やけに饒舌に喋りだす神官さま。
なんだ、この人。
つい可愛らしくて、笑みがこぼれてしまう。


「・・・・はい、わかりました。
お気遣い、ありがとうございます。」


「・・・・まぁ、いい。
そんなんだから、無理にチョコとか渡さなくても、」


「貰ってくださると、嬉しいです。
ただの私の、自己満足ですから。」



神官様の言葉をさえぎって言い切る。


そうしたら、神官様は、



「・・・おまえ、変な奴だな。」


そう言って、包みを受け取った。


そのときの顔が、悪逆非道の、マギ様ということを忘れるくらい、幼く、美しかった。



◇◆◇


今日は、バレンタイン、らしい。

やけに宮中の女子たちが追いかけてくる。


なにか恐ろしいものを感じ、必死で逃げた先に、なまえを見つけた。


丁度良い、かくまってもらおう。


そう思ったが、誰かと一緒にいるようだった。


・・・・・・・神官、殿?


そこには、チョコを持って、和やかに笑いあう、なまえと、神官殿がいて、なんだか、


むかついた。



◇◆◇


ふー。
神官様にチョコを無事渡し、なんだか一仕事終えた気分です。

清々しい気持ちでいたら、



「なまえ、」

「うぁはい!」



急に声をかけられて、変な声がでた。

え、でも、これ、まさかの、



「は、白龍様・・・?」



白龍様だーー!


・・・・・・・あれ、なんだか、怒ってらっしゃる?

私の後ろに立つ白龍様は、誰がどう見ても、不機嫌そのものだった。




「俺に、チョコはないのか?」



一瞬、自分の耳を疑った。


「神官殿には渡して、俺には、くれないのか?」


効果音をつけるなら、むすっ、だ。


「?、すみません・・・・。今年はあまり用意していなくて。」


「神官殿には、あげたのに?」


「あ、あれはお詫びチョコというか・・・。」


「・・・・・・・そうか。」




なんだか、拗ねていらっしゃる?

・・・いや自分!期待しない!


そう思っても、なぜか白龍様は、拗ねていらっしゃるようだし、何か言ったほうがいいみたいだ。


でも、なんて?




「もういい。悪かったな。」


頬を膨らませながら、白龍様が、どこかへ行ってしまいそうになる。




待って、待ってください____!




「来年になったらっ、貰っていただけますか!?」



背を向けた白龍様に、もう自分が何を言っているのか分からないくらい、必死に言う。



それは聞いた白龍様は、拗ねたことが、少し恥ずかしかったのか、背を向けたままで言った。



「楽しみに、している。」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ