短編

□遠くの君
1ページ/1ページ



煌帝国征西軍北方駐屯兵団


とかなんとかいうところに、私の愛しの彼は、属することになった。

西方侵略のため、特別に作られた部隊だそうだ。

彼はその中でも、なかなか良い地位にいるらしい。
白瑛皇女の眷属?だっけ?よくわからん。


まぁ、ただの金持ちな貴族の家の娘、いわゆるお嬢様(笑)な私には知るよしもないけれど。



そんでももって、まぁ侵略とかするらしいし?、結構長い期間国に帰れないらしい。





そんなことは、どうでもいいのだけど。


ふーん、よかったね。

で終了だ。




ただ、問題は、この、愛しの彼だ。

青舜なんていう名前の男だ。




「・・・・別れよう。」




似合わない真面目な面をして、ふざけたことを言いやがる、このチビだ。


一応理由は聞いてあげよう。
大したことない理由だったらアッパーね。



「なぜですか?」



口元は笑って、目には冷たい光を宿し、私は彼に問いかける。


青舜さんは目線を下にしているせいで、私の表情に気付いていない。




「なまえももう、大分前から聞いてたよね?
・・・・・・・・しばらく、会えなくなるから。耐えれないだろ。」





次の瞬間!


私の放った拳が!


青舜さんの顎にヒットした!


なんて見事なアッパー!


自分でも惚れ惚れするわ!





「いたああぁぁ!えっ、えっ?何?何が起きたの!?」




床に尻餅をつく青舜さん。

無様な姿の彼に、私は言い放つ。




「自惚れないでください。」



これ以上ないほど、言葉ひとつひとつに怒気を込めた。



青舜さんは驚いた顔で私を見上げている。

まぁ、驚くわな。


私は上から目線で続ける。




「まず、なんか勝手に別れるとか言ってますけど、そんな決定権は貴方にはありません!」



ひどい!と下から声が飛んできたきたけど無視をする。




「あと、貴方が遠征に行くことなんか私の知ったことではありません。さっき知りました。この私が!貴方のことを積極的に知ろうとするだなんてありえません!」



・・・ねぇ、ひょっとして僕のこと嫌いかい?とか言う声が聞こえた気がしないでもないが、華麗に無視をする。



「そして、遠くに行って耐えられないのは私じゃありません、貴方です!青舜さん!」



今度は、沈黙だった。

私は気にせず続ける。




「どうせ私がいなかったら青舜さんは生きていけないのですから、別れるだなんて浅はかなことは言わないでください!死にますよ?」



そして最後は、笑い声だ。



「あはははは!」

「本当のことです。何がおかしいのですか?」



もう、笑い事じゃないのに。
少し頬が膨らんでしまう。


青舜さんが笑いを止めて口を開く。


「・・・・うん。
その通りだよ。なまえ。
僕はいつのまにか、随分臆病になってたみたいだ。
・・・・・なまえには、敵わないなぁ。」



青舜さんが、嬉しそうに言うものだから、なんだか照れくさくなってしまう。

それを隠すよう、私は言葉を発する。



「当たり前です。大体青舜さんは、ご自分が思われている以上に前から臆病者です。」

「そーかな?」



そうです。と言えば、青舜さんはうーん、と唸り出した。



まったく、子どもみたいな人なんだから。

内心呆れつつも、そんな青舜さんを好きな私も私か、と溜息を吐く。



「?、どーかした?」



「いえ。ただ、
・・・・・・・私も、青舜さんがいないと生きていけないから、おあいこですね。」



少し恥ずかしくも感じる台詞だったけど、今さらか、と思い、口に出す。


青舜さんは、少し目を見開いた後、花のような笑顔を作った。


女か?ってくらい可愛いんだけど。





「・・・・・・・・・ほんと、なまえにはかなわないや。」




ああ、この笑顔がしばらく見れないのか、と思うと、やっぱり私もちょっとだけ寂しかった。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ