短編

□よくある話
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やっぱり、どこかのありきたりの話のようだ。







私は地に伏せ、そんな無様な私の傍らでシャルルカンは私の手を強く握って涙をこぼし続けていた。

私の手に当たり続けているシャルルカンの透明な涙を温かい、と感じた。





いかにもなシュエーションだなあ、と私は薄く笑おうとしたが、上手く顔が動いてくれなかった。


そろそろ、限界なのかもしれない。








「なまえ!なまえ・・・!」









ねえ、シャルルカン、貴方は今、悲しいの?







  
  目が霞んですぐ近くにいるはずのシャルルカンの大きな手が、煌めく銀髪が、浮かべた表情がよくわからない。




ああ、きっと、これが最後なのに。

私はすぐに砂となり、もう再び合間見えることなど、ないのに。



 




  



    かみさま、どうか、















・・・・・私は、無理矢理開かない口をこじ開けて、空気が通らない喉を震わせて、回らない舌を回した。









「・・・・しゃ、るるかん、」







シャルルカンに、最期の挨拶をするために。






シャルルカンの体が、びくっと震える。


それがなぜかおかしくて笑ってしまう。
でもやっぱり笑うことはできなかった。








「ねえ、しゃるる、かん・・・、ほんとに、よくある話、だったよね、」





私はおもむろにそう切り出した。






「何が、だ・・・?」






シャルルカンはその口調に悲哀を込めているが、私にしゃべるな、とは言わない。

だって私の死はもう確定していることだったから。










「わたしが、うまれ、たときから、ぜんぶ、だよ」






そうだった。私はずっと決められたレールを辿るかのようにして、この終点へと行き着いたのだ。

それはシャルルカンと会ったときからではない、物心ついたころからずっとだ。





振り返ると、本当によくある人生だった。


少しの虚しさを覚えた。






今までありがとう、とありきたりな言葉でこの生の幕を閉じようと再び口を開いたとき、











「・・・それでも、」





シャルルカンの声が私の頭に響いた。



































「それでも、そんな人生でも、なまえは決めてきた。
どんな運命になろうと、なまえは自分の進みたい方向へ進んだんだ。






なまえが組織に入ったのは、運命を呪ったからだろ?
なまえにとってはありきたりなことでも、親が殺されて悲しかったから、悔しかったから自分で道を選択したんだよ。


なまえと俺が恋仲になったのだって、こんな最期のためじゃないだろ?
俺は、なまえが好きで、好きで、なまえと一緒にいたんだ。
なまえだって、敵対してるってわかりながら俺と想い合ったのは、俺が好きだったから、自分で組織に反して決めたんだろ?




どんな運命でも、逃げずに決め続けたおまえは、 世界で一等強い女だ。」












いつの間にか、私の両の瞳からも、ぼたぼたとしょっぱい液体が大量に流れていた。



















「ほんとに、ほんと、に、そう、おもう・・・?」







私のこの生は、無駄じゃなかった?

決められたことじゃなくて、自分で作ってきた道だった?







「ああ、当たり前だ。

なまえは、俺が世界で一番、愛する女だ。」








急にピントが合ったかのように、シャルルカンの、相変わらず涙は限りなく零れていたけど、太陽のような笑顔が、はっきりと私の目に映った。





























「・・・・・シャルルカン、今までありがとう。」









今度はちゃんと、笑えた気がした。
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