片恋い。
□03
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こんこん、
部屋の扉を軽く叩く。
「失礼します、香桃です。紅玉様、居られますか?」
もうこのやり取りは慣れたものだ。
部屋の主に問いかける。
「入って良いわよぉ!」という声が奥から聞こえ、私は遠慮なく扉を開け、豪奢な部屋の中へ入っていく。
「いらっしゃい、香桃ちゃん。」
紅玉さんが微笑み、
「お邪魔します、紅玉さん。」
私も微笑んだ。
私は紅玉さんに、本当に良くしてもらっている。
可愛い人で、ずっと女友達が欲しかったらしく、ある日いきなり友達になってちょうだい、と真っ赤になって言われたときには本当に驚いた。
もちろん、1も2もなく了承した。
それから私は頻繁に紅玉さんの部屋を訪れ、他愛もない話をしたりするのだった。
友達だから呼び捨てでいい、敬語はいらないと言われたが、紅玉さんの方が年上だし、敬語は下っ端の私にはもう、癖のようになっていたので、部屋内だけさん付けで許してもらった。
そんな出会いからも1年ほど経ち、私が紅玉さんの侍女に昇格したりしたときは大喜びした。
「ねぇ聞いてぇ!この間もシンドバット様ったら格好良いのぉ!」
「紅玉さんは本当にシンドバット王のことが好きですねぇ。」
最近、紅玉さんはシンドリア王国国王、シンドバッド様にお熱である。
なんだか私は、紅玉さんが取られたみたいで良い気分ではなかった。
だけど、紅玉さんが幸せそうなのは、私も嬉しかった。悔しいけれど。
「香桃ちゃんはどぉなのよぉ。」
ギクッ
「・・・どう、とは?」
「白龍くんと、何か進展あったぁ?」
「・・・・・・」
目を紅玉さんから逸らす。
「香桃ちゃんったらもう、」
はぁ、と紅玉さんがため息を吐く。
「うぅ、だって・・・まず会う機会すらないですし・・・1日一回見るだけがやっとですよぅ。」
ついぐちぐちと弱音を吐いてしまう。
「だから、会わせてあげるって言ってるじゃないのぉ。」
「そんなっ、私なんかがおこがましいっ」
「いつまで言ってるのぉ。」
だって、本当に、おこがましい、私ごときが、白龍様と顔を合わせるだなんて・・・。
それに、心のどこかでは、このまま見ているだけでいい、と思う自分もいた。
近付いて、つり合わないと知って傷つくより、このままの方が、いい。
「・・・よしっ決めたわ!」
「?何をですか?」
紅玉さんが急に顔を上げ、明るい表情で言った。
「明後日、白瑛、白龍姉弟とお茶をするから、香桃ちゃん、あなた、私の侍女として来なさい!」
「え」
友達
たいせつなひと。