片恋い。

□03
1ページ/1ページ


こんこん、
部屋の扉を軽く叩く。



「失礼します、香桃です。紅玉様、居られますか?」

もうこのやり取りは慣れたものだ。
部屋の主に問いかける。


「入って良いわよぉ!」という声が奥から聞こえ、私は遠慮なく扉を開け、豪奢な部屋の中へ入っていく。



「いらっしゃい、香桃ちゃん。」

紅玉さんが微笑み、


「お邪魔します、紅玉さん。」

私も微笑んだ。




私は紅玉さんに、本当に良くしてもらっている。

可愛い人で、ずっと女友達が欲しかったらしく、ある日いきなり友達になってちょうだい、と真っ赤になって言われたときには本当に驚いた。

もちろん、1も2もなく了承した。

それから私は頻繁に紅玉さんの部屋を訪れ、他愛もない話をしたりするのだった。

友達だから呼び捨てでいい、敬語はいらないと言われたが、紅玉さんの方が年上だし、敬語は下っ端の私にはもう、癖のようになっていたので、部屋内だけさん付けで許してもらった。

そんな出会いからも1年ほど経ち、私が紅玉さんの侍女に昇格したりしたときは大喜びした。






「ねぇ聞いてぇ!この間もシンドバット様ったら格好良いのぉ!」


「紅玉さんは本当にシンドバット王のことが好きですねぇ。」


最近、紅玉さんはシンドリア王国国王、シンドバッド様にお熱である。
なんだか私は、紅玉さんが取られたみたいで良い気分ではなかった。

だけど、紅玉さんが幸せそうなのは、私も嬉しかった。悔しいけれど。



「香桃ちゃんはどぉなのよぉ。」


ギクッ

「・・・どう、とは?」

「白龍くんと、何か進展あったぁ?」


「・・・・・・」

目を紅玉さんから逸らす。



「香桃ちゃんったらもう、」

はぁ、と紅玉さんがため息を吐く。



「うぅ、だって・・・まず会う機会すらないですし・・・1日一回見るだけがやっとですよぅ。」

ついぐちぐちと弱音を吐いてしまう。



「だから、会わせてあげるって言ってるじゃないのぉ。」


「そんなっ、私なんかがおこがましいっ」


「いつまで言ってるのぉ。」



だって、本当に、おこがましい、私ごときが、白龍様と顔を合わせるだなんて・・・。


それに、心のどこかでは、このまま見ているだけでいい、と思う自分もいた。

近付いて、つり合わないと知って傷つくより、このままの方が、いい。







「・・・よしっ決めたわ!」


「?何をですか?」


紅玉さんが急に顔を上げ、明るい表情で言った。


「明後日、白瑛、白龍姉弟とお茶をするから、香桃ちゃん、あなた、私の侍女として来なさい!」


「え」




友達
たいせつなひと。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ