片恋い。

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期待しても、いいですか?







「紅玉さーんっ、朝ですよぉー!」


朝、紅玉さんの指定した時間の通りに紅玉さんを起こしに行くのが私の日課です。




「んん・・・・・、おはよう、香桃ちゃん・・・」


「おはようございます!」


まだ寝ぼけている紅玉さんに元気良く挨拶をする。


ああ、なんて清々しい朝なんでしょう!



「・・・・・・・・・どうしたの?
すごく機嫌、良いじゃない。」


私のハイテンションぶりに、紅玉さんが不審そうな目を向けてきた。



「どうもしませんよー!
そうですね、天気が良いからでしょうかね!」


今の私の気分のようにね!



「・・・・・まぁ、よかったわ。
あの噂のせいで元気なかったものねぇ。」

私の心配をしてくださってくれていた紅玉さんに、じんわりと涙がにじみそうになる。



「あんなのもう全然気にしてませんよー!」


「よかったわ。」



ふふ、とお上品に笑う紅玉さんに、私も笑みを返した。

なんだかこういうの、良いなぁ。









「そうね、今日は収穫祭だものね。やる気を出さなくちゃあいけないわね。」

紅玉さんが思い出したように言った。


「あー、そういえばそうでしたねー。」


そういえば、すっかり忘れていた。

浮かれすぎていたようだ。

いけないいけない。




収穫祭は、名前の通り、作物の収穫を祝う祭りだ。

遠い異国のように、仮装したりはしないが、大き目の国をあげての祭りだ。


毎年、皇族様たちが何か催し物をする。
まぁ、毎年パレードみたいなものなのけど。





「はぁ、面倒くさいわぁ。」


「シンドバット王が来られるそうですよ。」


「頑張りましょうね!香桃ちゃん!」


可愛らしいなぁ。





「ふふ、そうですね。
ではまず、お着替えをなさいましょうか。」


「香桃ちゃん、選ぶの手伝ってね!」


「はい、もちろん。
その後で御髪も整えましょう。」


「まかせたわ!」



「準備してきますね。」


そう告げて廊下に出ると、足の下から寒気が来て、思わず体が震えた。





「秋、ですね。」


一人、秋の訪れを感じた。
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