片恋い。

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「へぇ、それで青舜殿も一緒だったのですね。」


「ああ、あいつと姉上の機動力には付いていけないものがあるな。
良い歳だというのに。」


「紅玉様もそんなかんじですよ。
きっとお祭りが珍しいんでしょうね。」


「よく人に酔わないものだな。」



「そうですね、人ごみに慣れていない人たちとは思えないですね。」



「全くだ。
楽しみのが勝っているのであろうな。」




ただ今、白龍皇子と一緒に、帰り道を探しているところです。

もうなんだか二人とも迷子で、同じ穴のムジナというかんじで、談笑しながらてくてくと歩いております。


身分とかそんなの迷子の前では関係なく、
一人より二人の方が心強い、ということで、少しくだけた雰囲気でもあります。



帰り道よ、見つかるな。

全力で隠れろ。




「私、この辺りには一度来たことがあるんですけどね。」


「そうなのか?」


希望があるような顔しないでください。



「・・・・・・もう、全然覚えてないですけど。」


・・・・残念そうな顔しないで下さい・・・。


忘れているのは本当だ。

何年か前に一度、地図を片手に行った道を覚えていろという方が無理な話だ。
それに建物もいろいろ変わっていて、私の断片的な記憶も役に立ちそうもない。

・・・・・今回の屋台巡りは全部夏黄文殿に丸投げしてたんだよ・・・。


まぁ覚えていてもこの幸せすぎる時間を少しでも引き延ばすため、言わないと思うけど。

・・・・・・だから白龍様のがっかりとした表情に、良心が痛む。


いや、だって知らないのは、ほんとだし!

別にやましくないし!

恋する乙女にはこれくらいの強かさって必要だと思うし!





「・・・・・どうした?」


「いえっ、何も!」


白龍様が訝しげな目で見てる・・・

恥ずかしい。
少し赤くなった顔を、下に向ける。



すると、白龍様はなにやら考えるような素振りを見せ、


「ふむ、少し休むか。」

ふと、口を開いた。


「え?」

きょとん、と間抜けな顔になってしまう。



「そこの木陰にでも座っていろ。
水を買ってくる。」


「いや、でも、」


「いいからさっさと行け。」


「は、はい。」



・・・・・気を使ってくれたのだろうか。

去り行く背中を見つめて想う。


確かに、結構歩いたせいか、足は疲労を訴えていた。


白龍様のことばかり考えていて、あまりわからなかったが、白龍様は、気付いてくれたのだ。


きっと、慣れない人ごみで、私なんかより、ずっと疲れていらっしゃるのに。



なんだろう、なんて言うんだろう。


この、なんとも言い表せないような、この気持ち。



胸の奥が、むずむずするような、満足感。








これが、幸福感、というものか?


それに近いような、少し違うような思いを抱え、木陰に腰を下ろした。
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