片恋い。

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うふ、うふふふふふふ。

あー、幸せだなーっ、

ニヤケが止まらないなーっ。


迷子帰還後、私の頭の中は、白龍様で埋め尽くされていた。






「ねぇ、夏黄文、香桃ちゃんはいったいどうしちゃったのぉ?」


「さぁ・・・。迷子になって帰って来たかと思ったら、ずっとこの調子ですね・・・。
ぶっちゃけ少し気味が悪いです。」


ひそひそ、そんな私の陰で、私の主様と同僚は、首をかしげていました。


「初めはあたくし、怒って演技しているのだと思っていたのだけれど・・・。」


「あの馬鹿にそんな脳はありませんよねぇ。」


「まっ、失礼よ。
ちょっとのんきで嘘が下手なだけじゃないっ!」



「・・・・・・・聞こえてますが。」


さすがにいたたまれなくなって来て言う。
二人がびくっ、と一瞬たじろいだ。

こっちちらちら見てそんなにヒソヒソ言われたらそりゃあ私も気になる。



「まったく、ひどいじゃありませんか。」


むぅ、と少し頬を膨らませてみる。
いつもならここでぷんぷん怒るのだろうが、今心の中には、怒りという感情が無かった。

脳内がお花畑になっているようだ。



「あっ、ご、ごめんねぇ!悪気はないわ!」


紅玉さんが必死で謝ってくれる。

私に嫌われるとでも思ったのだろうか。

可愛らしいお方だなぁ。


なんだか最近、世界の全てのものがいとおしく思えてくる。


「うふふ、冗談ですよ。
そんなに慌てないでください。」

私の優しげな物言いに、二人はぎょっとしてこちらを見てくる。

そんなに意外だったのだろうか?

ていうか、いつもの私を何だと思っているのだろう。


もう、しょうがないなぁ。
そんな二人にも、慈しみの感情が生まれてくる。

恋のパワーすごい。

心内で、くすっと笑った。



では、私は仕事に戻りますね。

立ち尽くす二人に一言置いて、その場を立ち去った。







「・・・・・・・やっぱ、変よねぇ。」


「こないだまで、青舜殿と噂になったと沈んでいませんでしたっけ・・・?」


紅玉さんと夏黄文殿は顔を見合わせていたとかいないとか。
 

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