捧げ物

□約束をしよう 4
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 月が頂点にくるころ













いつのまにか約束をしなくてもその頃に彼と私は会うようになってた
















私は今、それに終わりを告げようとしてる


















心の準備をするためにいつもよりも早く来た

















自然と心は落ち着いている

















もう少しで彼が来る


















小さく深呼吸をした




















「今日は早いな」



















『今日は伝えたいことがあってきたんだ』




















「あ?なんだ?いってみろよ」


















本当はいろんなこと話してそれから言おうと思ってた




















私の中でシナリオが用意されてて、自然な形で告げようと思ってたのに
















彼の顔を見たら、それはできないんだって分かっちゃった


















だって、顔をみたら、話をしたら、

















離れがたくなっちゃうよ















『私、もうここに来れなくなっちゃったの』



















「は?」


















『家の都合でこれからもう行かなくちゃいけないんだ。
こんな形でごめんね。一緒に過ごせた日々はすごく楽しかったよ。きっと一生忘れない』


















 本当の中に嘘をいれる



















それは今までもしてきたこと

















それなのに、どうしてこんなに辛いんだろう



















「お前、何言ってんだよ」



















『何って?急でごめんね。またいつか会えるといいな。またね』

















早くここから離れたい
















”またいつか” なんて。


















そんな日はこない



















どうしよう、うまく笑えてるかわからないよ



















スバルくんごめんね



















私にとってはあなたとの出会いは最後の素敵な思い出だから




















スバルくんにとっても、少しでも私という存在が残ればなんて考えちゃってるよ





















自分勝手に目の前から消えようとしてるくせに



















覚えて欲しいだなんて



















忘れられたくないなんて



















「お前、本気かよ?」





















『うん。もしどこかで見かけたら声かけてね。ばいばい』





















明るく振舞う




















見かけることなんてない。だって、私はこれからいなくなるんだから


















ばいばい。永遠のさよなら















スバルくんの返事も聞かずに私は後ろを向く




















このままこうしていたいって気持ちを押し殺して

















小さく息を吸う















もう振り返らない。そう決めて私はその場を去った。












スバルくんがどんな顔をしていたのかなんて知らずに

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