君に、恋をした (シュウ)

□君に、恋をした
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プロローグ1







その日はなんとなく家にいるのが嫌だった


 なんの気なしに人気のない道をぼんやりと歩く


 だいたいあいつらは騒がしすぎるんだ


 満月の夜だからか気が立っていていつも以上に騒々しかった兄弟達を


 思い出し、ため息をつく


 俺はもっと静かに音楽だけに耳を傾けていたいのに


 白い花びらがひらりと自分の方に落ちてきたところで意識を


 外に戻した


 どこだここは?


 まぁ、静かでいられるならどこだっていいけど


 夜空には真ん丸の月とその周りに星が散らばっていた


 人間どもが見たらきっと綺麗だなんだと言ってその光景に見入ることだろう


 別にそんなのを見たところで心なんて動かされない


 ほかの桜はみな満開に咲いているのに一本だけ蕾もつけずに


 ただそこにあるだけの樹があった


 特に何を思ったわけでもない


 なんとなくその樹の下に腰を下ろしてめをつぶった


 どのくらいの間そうしていたのか

 
 静かでいて、綺麗で凛とした歌声で目が覚めた


 その紡がれる歌に不思議と心が落ち着いた

 
 自分の中にある汚いものが消えていくようでひどく心地よかった


 そのままもう一度目を閉じ、耳をすませた


 その歌に身を任せるように俺は眠りについた

 
 
  この日から俺はこの歌を聴くためだけに

 
  怠いからだと格闘しながら夜になるとふらりと立ち寄るようになった
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