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□紅い月明かりA
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総悟を見付けてから屯所に戻って来て、二週間経った。

総悟はずっと部屋に籠っている。
俺達に見ることすら拒絶するようになってしまった。

「沖田隊長、ご飯持ってきました。」

山崎が朝飯を持って総悟の部屋へ行く。それが日課になっている。

「沖田隊長…?ちゃんと食べて下さいね。これ以上食べなかったら体に良くな…」

「うわァァァァ!!!来んなぁぁぁ!!」

山崎が襖を開けて部屋に1歩足を踏み入れればいつもこうだ。
総悟は部屋に入られるのを極端に拒んだ。そして人に触れられれば気が狂ったように暴れた。
それが近藤さんにまで同じような態度だから困ったもんだ。

「…副長、駄目でした」

俯いたまま戻って来た山崎に「嗚呼…、ありがとな。悪い…」と呟いて自分も総悟の部屋へ向かった。



「総悟」

襖越しに名前を呼ぶ。
中でビクリと跳ねた気配がした。

襖を開けて少し驚く。総悟の部屋の中は酷く散乱していた。
山崎が運んできた飯は隅の方に置かれているが座布団やら枕やらが投げ捨てられていた。


「…総悟、飯食わねぇのか?」

部屋の中に足を踏み入れてみる。
案の定、沢山のものが飛んできた。

「や、入るな!近寄るなぁぁぁ!」

絶叫に等しい叫び声。
痩せ細った体、目の下のクマ。
俺は飛んできた枕を避けたり手で叩いたりしながら総悟に近付く。

「うわァァァァァァ!!!!」

叫ぶ総悟の手首を握りギュッと抱き締める。

「総悟ッ…、総悟…!」

名前を呼んで落ち着かせようと抱き締める。
早く元に戻ってくれるように願いながら。


だが、願ったところで総悟は落ち着いてなんかくれなかった。

「あッ…、あ゙ぁぁぁぁぁぁ!!」

突然この細い体からは想像も出来ない力で突き飛ばされた。

「ッ…た!」

突き飛ばされた衝動で尻餅をついてしまった。

「出てけ、出てけェェェェェェ!!!!!!」

叫びながら手元にあった枕を俺に投げてきた。

「………くそッ…!」

これ以上総悟を刺激してはまずいと考え、俺は総悟の部屋を出た。

もう元の総悟には戻ってくれないのか、
そう考えたらやりきれない気持ちになった。

俺にはもう何も出来ない。

あとは総悟が決める事だから。


ー続く-



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