イナズマGO
□夏よ、こいこい
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「なぁー剣城ぃー…」
「なんだ」
「暑いよー」
「…何回言うんだ。これで10回目だぞ。」
蝉がうるさく鳴いている季節。俺達は太陽の当たらない木の下で涼んでいた。
剣城と友人関係になって約3ヶ月。やっと梅雨の時期が終わり、7月に入ったばかりの、これから夏が始まろうとしている季節だ。
あのとき…剣城とグラウンドを去った後、結局俺はサッカー部に入った。だってサッカー好きだもん。
まぁ、先輩達には白い目で見られちゃったけど…。
でも、一部の先輩達は俺が剣城の友達って知っていても何もしてこない。むしろ手助けしてくれてる。
優しい先輩達だ。
…俺、さらーっと説明してるけど、今すげぇ暑いんだ。暑いより、熱いの方があってるかも。
あー…熱い。
それに比べて剣城はいつも通りだ。あまり豊かではない表情、太陽にいっぱい当たっているはずなのに日焼けしない白い肌。
いつもと違うのは改造制服の上着を脱いでいるだけ。流石の剣城も夏に上着は暑かったみたい。
「なぁ剣城、」
「暑いんなら図書館にでも行っとけ。あそこならクーラーがついてて涼しいだろ。」
「そんなこと言おうとしてたんじゃないんだけどな。」
とは口に出さず、心の中だけで思っておこう。剣城、怒ると怖いんだもん。
「プールに行きたいなぁ〜…」
「俺は行かないぞ。」
「え、なんで俺が剣城誘うってわかったの!?」
「言いながらこっちの方見てたぞ。バレバレなんだよ。…西園達と行けば良いだろ?」
「えぇ〜…」
信介達と行くのも楽しいけど、俺は剣城と二人っきりで行きたい。
…はっきり言えば、デートがしたい。
プールでイチャイチャして、一緒にアイスクリームなんか食べたりしちゃって!!
……はっ!!
だけど、こんなこと言ってしまえば今まで築いてきた友情(出会って3ヶ月しかたってないけど)が壊れてしまう!!
しまった。あぁどうしよう…
一人で悶々と考えていると、頬に冷たい何かが当たった。
「冷たっ!?」
「ほら。」
「…ジュース?いつの間に買ってきたの?」
「お前が百面相してる間に。このまま放って置いたら頭が爆発するんじゃないかと思って…」
やった、俺の好きなカルピスだ!
って、そんなことはどうでもいい!!
剣城が…剣城が俺のためにカルピスを買ってきてくれた!
どうしよう。すっっっごく嬉しい。
「剣城、ありがとう!あ、お金返さないといけないよね?ちょっと待ってて」
「別にいらない。」
「だけど、」
「空からカルピスが降ってきたとでも思え。」
空からカルピスってどんなだ!
…けど、そんな剣城はやっぱり男前でかっこいい。そんな彼を俺は好きになって良かったな、と改めて思う。
「でも、何かお礼ぐらいはしたいなぁー…」
「お礼って…たかがカルピス一本で」
「俺にとっては大切な一本なんだよぅー」
本当に大切なんだ。剣城から貰ったものは全部宝物なんだよ、俺にとって。
「お礼、何にしよう」
「……ぃ」
「え?」
「お礼なんかいらない。だから約束しろよ。」
「約束?」
なんの、と言おうとしたけど、その言葉は口から発することはなかった。
剣城が真面目な顔つきでこちらを見ていた。
「…これからもずっと友達でいろよな。」