人間を、殺す。

□【人間を、殺す】
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『.......』


僕は日の光で起きた。

ここは、鉄の檻の中。
床や壁には、血で赤黒く変色している。
首には鉄の首輪、そこに繋がられてる鎖。
他にも両手首、両足首に鉄の輪。

もう重いとも思わない。思えない。
長い事付けてたから......。
それに、ここから出た事もない。
外にある“なにか”すら、見たことはない。

そんな事思っていると、甲板からドガァンッというデカイ音が聞こえた。

  ★             ★

ここは白ひげ海賊団。
四番隊が今、海軍と戦闘中だ。


「うっらああああ!!!」

「グハア!!」


バタバタ倒し、前に先頭きって進むサッチ。

それから、どんどん進んでいくと、とある鉄の扉にあたった。


「...なんだ?ここ...重ッ!!!?」


開けようとしたら、思った以上に重い。
その重い扉を無理矢理開けると、そこには思いもよらない人がいた。

  ★            ★


「.....重ッ.....」

『?...誰?』


扉の向こう側から、男の人の声が聞こえた。
生贄が来たか...でも、今日はやけに早いな。
あれ、僕がもう時間もわかってないのかな...?

----ギイイイィィィィッ!


『...誰?聞いてないけど...お兄さんが今日の生贄?』

「は?.....」

『...どうしたの?違うの?っていうか、お兄さん誰?』

「あ、ああ、俺はサッチ。お譲ちゃんは?」

『僕はユウ』

「そうか!ユウちゃんは、なんでそんな物を...待ってろ!今取ってやるから!!」

『へ?へ....!!?』


こんな事されたことがなかったから、どう反応すればいいかわかんない。
ただ、目の前にいるサッチっていう人が、僕の手首や足首に付いてる鉄の輪を外そうと必死になっていた。

なんでこんな事するの?なんで僕を助けるの?
僕を助けてなんになるの?僕を助けて徳があるの?

わからない、わからないよ。





い。

僕はどうすればいいのかわからず、ただ黙って見ていた。
すると、サッチの表情が険しくなり。今まで膝を下っていたのを立ち上がり、腰に合った剣を抜く。
ああ、僕は殺されるんだな。でも、それもいい。もう殺したくない。
と思い目を閉じた。でも、痛みはこず変わりに来たのがキィィィィンと言う鈍く耳に響く高音だった。


「クソッ!ダメか!!」


なんの音か確かめる為に目を開けると、信じがたい事をサッチはしていた。
抜いた剣を僕の足首にある輪に向かって振り下ろしたのだ。

なんで???そこまでするの....。。。。


「ここで待ってろ!今鍵を探してきてやる!」

『いいよ、もう行って』

「おまッ!?なに言ってやがる!」

『この騒ぎだもん、時期に海兵が来る。ここにいたら殺されちゃう....』


それに僕にあなたを。。
その為に、僕は育てられ・作られたのだから。
『だからここから、早く出て。僕は放っておいていいから』
と言うと、サッチは俯き拳を握り締めた。


「ふざけるな、ふざけんなよ!!」

『.....』

「いいか、俺が命を掛けてでもここから連れ出してやる!!」

『なんで....』

そこまでするの...?

「決まってんだろ!俺は、女は見捨てねェの!」


「待ってろよ!!」といい、部屋を飛び出して行ったサッチ。
意味のわからん事を言って、飛び出してった。

サッチが帰ってくるまで、僕はずっと考えてた。でも、答えは出なかった。

その時。
カツッカツッーと靴の音が聞こえた。
知ってる、この靴の音。あいつだ、あいつが来た。


「やァユウ君。目を覚ます頃合だよ?」

『......』

「君も知っての通り、今この軍艦に海賊が乗り込んできた。無粋な輩だよ、本当に。そこでだ、君に掃除を頼みたい」


ほら来た。

いつもなら『わかりました』と言うのだけど、今はなぜか言えなかった。





どうしても、彼の事が頭から離れない。。
なんで....??

いつまでも返答が来ない僕に、博士が怒鳴った。


「おい!いつまでそうしている!!」

『ック』


僕の前髪を掴み博士の目線まで持ち上げられ表情が歪む。


「ッチ!海賊がここに来たんだな?それでお前は毒された、違うか!」

『ッ.....!!』

「ク、このッ!!」


海賊のキーワードが出て、僕は唇を噛み締めた。それが気に入らなかったのか、僕をもう一つ空いてる手で拳を作り、顔を殴って壁に打ち付けた。


『ッくぅ....!』

「まァいい、どうせここに来るだろうからな。さァ、ユウ君。君の出番だ」

『!!!』


博士が僕になにをさせようとしたか、すぐにわかった。サッチを、殺させるつもりだ。と。

ヤダ、ヤダヤダ。サッチを殺したくない。初めて思った、誰かを殺したくない感情。

博士は胸ポケットから僕の錠の鍵を出した。


『!』


博士が持ってる、って事は...サッチは。。

どうしたの....??

怖くなった、これも初めて。恐怖を抱いた。それも今日初めて会った人にだ。

初めて輪を力づくで壊そうとした人。
初めて鍵を取って来る、と言った人。

あの人の言った事なにもかもが、僕に取っては初めての体験だった。

そんなサッチを殺す??出来るわけがない。

錠を全部外され、無理立たされ背中を押された。
見つけて殺しにいけ。
という事だろう。


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