小説

□焦がしキャラメル
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ドアの向こうに人を確認するときゅうっと胸のあたりが温かくなるのを感じ、カチャカチャと鍵穴が音を立てると名無しさんの表情に温かさが戻る。

ドアが開けば、待ちわびていた愛しい相手の胸元へ飛び込んだ。

「お帰りなさい…!」

「あぁ?…なんだ、わざわざ待っていたのか」

右手を名無しさんの頭へやるとそこを軽く撫でてやりながら、ジャックはもう片方の手を彼女の背中へ回した。

「ふぅ…っ、あなた…… 好き」

「名無しさん」

「はい…っ」

名前を呼ばれ思わず顔を上げた名無しさんはジャックと目を合わせると明るい笑みを向けた。

「……。若干、目が腫れているな」

それに反してジャックが淡々と言葉を返すと、彼女は表情を曇らせて一瞬目線を外してしまう。

「んー、DVD見て…」

「ふざけるな」

名無しさんが先程のような笑みで視線を向けるも、ジャックはぴしりと突き刺さるような視線と言葉を返す。

「や……」

「儂に隠し事が出来ると思っているのか? 口で言えないのなら…」

ジャックは左手の位置を落としていき触れる場所を彼女の腰へと変える。
右手は彼女の顔の前へ持ってくると親指で唇を撫でながら、残りの指を顎に添えた。

「っ…!やだ、なん…で…」

名無しさんは抵抗を試みるもそれは叶わない。
年齢的にいって力の差をを考えれば抗えないことはないが、ジャックの雰囲気に気圧されてしまう。それに好きな人にここまで触れられてしまったら…

名無しさんは熱く潤んだ瞳に羞恥を浮かばせながら、ジャックにしがみつくよりなかった。
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