小説

□焦がしキャラメル
3ページ/4ページ

「どうだ…丁度良く、力も抜けたじゃろ…」

耳音で囁かれた言葉に応えようとするも名無しさんは赤く染めた頬を隠すように視線は合わせられず、うつむいたまま言葉を送る。

「意地悪…でも、っ…ごめんなさい」

「…ふむ。」

「私… 急に不安になることが…あるから。もう1人じゃないのに…あなたが居るのに、…っ……普通にしてても、急に涙が出てきて…悲しいこと、思い出して…っ〜〜〜」

絞り出すように名無しさんは言葉をジャックへ向け、再びしがみついた。

「もう…1人じゃない、と言ったか。
それは儂も……同じだ」

「っ…!」

「だからと言って完全に負の思いが消えるわけではない。
…過去も事実だ。事実は消しようがない、それも受け入れ…認め、…乗り越える試練の時なのかもしれん」

そう言い終えるとジャックは名無しさんへ頬を寄せる。

「あなた…」

「名無しさん…」

「乗り越えたい、です」

「あぁ。」



互いの体を抱きしめ合い、2人は鼓動を感じていた。

心地よい。そう思った。

これからどんな試練が待っているか分からない、けれども・・・

不安よりも大きな安堵の想いが確かに、芽吹き始めていた。





Next→あとがき
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ