小説
□特効薬
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「昔っからさ、ビジネスに釣られてる感じで嫌だったんだよねー」
「あ?何がだ…」
名無しさんを後ろから抱きしめたままでジャックは彼女の顔を覗き込んだ。
この日は久々に互いの休日が重なったということもあり、朝から2人で過ごしていた。
夕食も済ませ、一段落ついたところでリビングのソファーでくつろいでいたところ、名無しさんがぽつりと話を切り出したところだった。
「…バレンタイン」
「あぁ。そう言えばもうすぐだったか。
確かにチョコレート会社の戦略と言えばそうなるが…」
「うん。 でもね、最近チョコを渡すのもいいかなって」
背を向けた体勢から名無しさんは、くるりとジャックの方を向く。
「……気になる相手でも出来たか?」
「ばか〜〜〜。 …ジャックのことしか考えてないよ。知ってるでしょ」
そう言うなり名無しさんはわざとらしく頬を膨らませてジャックと視線を合わせてみる。