W学園は楽しいところっ!

□朧気な記憶
1ページ/3ページ


「入るぞ、菊」


 眉毛はそう言いながら扉を開く。

 いや、せめて返事を聞いてから入ろうぜ。そんなんじゃあ、紳士の名が泣くぜ。←誰

 まるで、どこぞの刑事みたいだ。『邪魔するぜ』って言いながら入ってきて、大学生に『邪魔だと思うなら帰って下さい』って言われる熊の如く体格を持つ、おっさん刑事……。駄目だ、分かる人にしか分からないこと思ってるよ、ボク。


「おや、アーサーさん」


 そこに居たのはさっき生徒会室に入ってきた黒い髪の青年だった。きっちり着ていた制服をすっかり部屋着(ジャージ)に着替え、眼鏡を掛け、前髪をヘアゴムで止め、ベッドに寝転がり、ちゃっかりくつろぎ中オーラ全開の祖国だった。


「お前……何してたんだ?」

「何って。そろそろ時期なので、過去の作品を見返しておりましたが……。何か?」


 祖国は持っていたA4の紙束をめくりながら、しれっと言った。え、何? (眉毛と)幼馴染みか親子かなんかなの? 祖国すげぇくつろいでんだけど。


「……深く詮索しないが……。あ、そうそう菊。お前に訊きたいことが…」


 眉毛が全部言い終わらない内に、眉毛の上着のポケットからピピピと音が聞こえてきた。

 眉毛は、はぁ、と深いため息を突き、ポケットを探ってスマホを取り出した。って、まさかのiPhone5かよ!?


「なんだ、フランシス。……ああ? そんなのどうにかしろよ。……チッ、分かったよ。じゃあな」


 眉毛はまた、はぁ、と深ぁーいため息を突き、iPhone5をポケットにしまった。


「菊」

「何です?」

「すまないが、この侵入者を頼むぞ」

「え、ちょ……?」

「別に構いませんよ」


 え、マジで?(二重の意味で)

 そして眉毛は何やら用事が出来たとかで、ボクを祖国に預けて、出ていってしまった。






.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ