W学園は楽しいところっ!
□朧気な記憶
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「入るぞ、菊」
眉毛はそう言いながら扉を開く。
いや、せめて返事を聞いてから入ろうぜ。そんなんじゃあ、紳士の名が泣くぜ。←誰
まるで、どこぞの刑事みたいだ。『邪魔するぜ』って言いながら入ってきて、大学生に『邪魔だと思うなら帰って下さい』って言われる熊の如く体格を持つ、おっさん刑事……。駄目だ、分かる人にしか分からないこと思ってるよ、ボク。
「おや、アーサーさん」
そこに居たのはさっき生徒会室に入ってきた黒い髪の青年だった。きっちり着ていた制服をすっかり部屋着(ジャージ)に着替え、眼鏡を掛け、前髪をヘアゴムで止め、ベッドに寝転がり、ちゃっかりくつろぎ中オーラ全開の祖国だった。
「お前……何してたんだ?」
「何って。そろそろ時期なので、過去の作品を見返しておりましたが……。何か?」
祖国は持っていたA4の紙束をめくりながら、しれっと言った。え、何? (眉毛と)幼馴染みか親子かなんかなの? 祖国すげぇくつろいでんだけど。
「……深く詮索しないが……。あ、そうそう菊。お前に訊きたいことが…」
眉毛が全部言い終わらない内に、眉毛の上着のポケットからピピピと音が聞こえてきた。
眉毛は、はぁ、と深いため息を突き、ポケットを探ってスマホを取り出した。って、まさかのiPhone5かよ!?
「なんだ、フランシス。……ああ? そんなのどうにかしろよ。……チッ、分かったよ。じゃあな」
眉毛はまた、はぁ、と深ぁーいため息を突き、iPhone5をポケットにしまった。
「菊」
「何です?」
「すまないが、この侵入者を頼むぞ」
「え、ちょ……?」
「別に構いませんよ」
え、マジで?(二重の意味で)
そして眉毛は何やら用事が出来たとかで、ボクを祖国に預けて、出ていってしまった。
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