W学園は楽しいところっ!
□朧気な記憶
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「それで、私に何を訊きに来たんです?」
祖国は寝転がっていた体勢から起き上がって、ベッドの上で正座しながら訊いてきた。
真剣な眼差しはかっこいいんだけど、なんせ格好が格好だから、かっこよさ半減してるよ、祖国。ボク、ちょっと悲しい。
「あの……」
「かくかくしかじかは私には通用しませんからね?」
「ひ、酷い!?」
な、何故バレた!? 普通なら見逃してくれるよね!?
「それと、ナレーションで語る、または省略も許しませんよ」
鬼畜祖国だ! 黒日本だ!
「再び伺いますが、私に何を訊きに来たんです?」
「えっとですね……。ボクは侵入者という扱いを受けて、ゴキゴキ──えと、ルートさん? に生徒会室に連れて行かれて、『志井菜』という名字が連5の皆さん──生徒会の方々が知らないと言うんで、『だったら菊に「志井菜」という名字を訊けば、何か分かるんじゃないか?』ってなって、ここに来たんです」
「そうでしたか」
祖国はボクがここ──祖国の部屋に来た理由を述べると、何やら複雑そうな顔をしていた。
「ちなみにお尋ねしますが、貴女の名前は?」
「えと、陽歌です」
「本名でお答え下さい?」
「え、えと、志井菜 陽歌です」
祖国の威圧感的なものに押され、思わずフルネームをサラッと答えてしまった。くそっ、ずっと陽歌で突き通そうと思ったのに……!
「なるほど。どおりで『志井菜』という名字が話題に挙がるわけですか」
まあ、それだけじゃないんだけどね。
「それで、そこk……えと、き、菊さん? が何か知らないかなぁと思いまして」
「そうですか……。しかし、それだけでは何故『志井菜』という名字が話題に挙がる理由にはなりませんね」
「えっ……?」
「何か他の理由があるのではないのですか? 志井菜さん。本当の理由は何です?」
妙に鋭く、黒い祖国は最初に質問してきた時より、随分と真剣な目をボクに向けたのだった。
(※祖国はジャージ姿のままです)
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