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□World
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変な誤解のおかげでおばあさん(川平時音さん)は名前をまるで孫のように扱った。
近所の歳の近い三浦ハルという女の子を紹介してくれた上に日常品を購入するためのお金までくれたのだ。
流石に団服姿で出歩くわけにはいかないため、罪悪感を感じながらもお言葉に甘えることにした。

「あ、ここのお洋服屋さん可愛いんですよ!」
「本当、」

社交的なハルに街を案内して貰っていると、ふと本屋が目に入った。

「ねえ、ちょっと本屋さん寄っていい?」
「あ、そういえばハルもほしい本があるんです…ちょうどよかったです!行きましょ!」

本屋に入るとハルは意外にも参考書のコーナーに向かった。
少女マンガが好きそうなイメージがあった名前は驚きつつも自分は地図のある棚へ行く。

「(日本全国…これね)」

中学校にありそうな日本地図を手に取ると、パラパラと捲る。
自分の生まれ育った○○県××市、○○県××市と注意しながら探しているうちに全ページが終わってしまった。
仕方なくより詳しそうな地図を選ぶ、が同じような結果になった。

「(これが…最後)」

コーナーにある最後の地図を手に取る。手が震える。
ここは現代、車があるし、飛行機もある。もちろんアクマや千年伯爵はいない。
当たり前である。…だったら、現代で生まれた自分の市がちゃんとあるはず。
○○県××市、○○県××市…
パラリ、と最後のページを捲った。

「(なんで…?何でないの…!?)」

地図をもう一度見直そうと手を伸ばした時。

「名前ちゃん決まりました?」

後ろから聞こえた声に慌てて振り返ると、ハルが本を抱えて立っていた。

「あ…、ううん。まだ、かな、うん。」
「あ、じゃあ私、お会計に行ってきますね!」
「うん、」

現代だけど、「私が生きていた」現代じゃない。
ふと浮かび上がった考えが自分でも妙に納得ができた。


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ハルちゃんのコミュ力
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