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第一章 使徒
第一話 出会い
暗闇から意識が浮上する。
頬にチクチクしたものを感じ、重い瞼を持ち上げた。目に入ったのは緑。
焦点が合うとそれが草だと分かった。チクチクしたのはこのせいか、とぼんやりと考えて上半身を起こす。
顔をあげて、そこで漸くはっきりと目が覚めた。
「ここ…どこ」
ぐるりと周りを見渡す。
辺りは暗く、草木が生い茂っている。今のところ分かるのはそれだけだった。
名前は慌てて記憶を探る。
「(学校が終わって、帰り道を歩いてて…そうだ、地震がきて…)」
そう、今日の帰り道では地震があった。
振動を感じ、地震だ、と頭が認識した瞬間、次に名前が感じたのは浮遊感。そして急速な下降感。
しかし覚えているのはそこまでだった。そこから先は、意識はブラックアウト。
そして今に至る。
「ど…いうこと…?」
事の重大さを悟り段々と動揺が湧き上がる。
ぐるぐる回る思考をなんとか整理しながら考えを巡らす。
たとえ地震で入った亀裂に落ちたとしてもこんな草木の生い茂った場所に落ちるはずがない。逆に地面の下にこんな場所があるなら大発見だ。
名前は思わず上を見た。自分が落ちてきた穴なり亀裂なりがあるだろうと思ったのだ。
しかし目に入ったのは輝く星。
「…………え…?」
呆然と夜空を見上げる。
都会のように周りにイルミネーションやライトがないからか、星本来の輝きが見て取れた。
だが残念なことに今の名前にそれを綺麗と思う余裕はない。
彼女の頭は疑問符で埋め尽くされていた。
名前は強く目を瞑る。夢なら覚めてほしいと思いながら10秒ほど経って、そろりと目を開けた。
願いも虚しく、やはり視界には星空………を背景に羽のついた目玉が飛んでいた。
「……………ぎゃあああああああッ!!!??」
三秒ほどその目玉と見つめあい、叫びながら後ずさる。
『あー…そこのお嬢さん、聞こえるか?』
「…ッ?!」
突然聞こえた男の声にぎょっと辺りをを見渡した。
…誰もいない。
『こっちこっち…ちょ、そっちじゃなくて目の前!』
恐る恐る目の前の変な生き物に目を向ける。やはり、というかどう考えても声はそこから聞こえるようだった。
『あ、大丈夫、それ監視カメラ付き通信機みたいなものだから。何もしないからな』
変な目玉…ではなく通信機に怯えていることに気付いたのか、そう説明されたが、警戒は解けない。
本来人間というのは正体の見えないものに恐怖心を抱く生き物だ。侑加の反応は至極当然のものだった。
しかしこの通信機の向こうにいる人物は危害を加えるつもりはないように思えた。
名前は自分の疑問、つまりここは一体どこなのか、に答えてくれるかもしれない、と希望を抱く。
「あ、あの…ッ」
微かな可能性を胸に口を開いた。
「ここはどこですか!?」
『あんたどこから来たんだ?』
被った。
「あ、すみません!」
『あ、ああスマン』
互いに慌てて謝り、そして、
「『そちらからどうぞ!』」
また被った。
「…あ…」
『あ〜…と…』
何とも言えない沈黙がおりる。
どちらも相手がいつ話し出すかわからず戸惑っていると、向こう側が騒がしくなった。
『なんなんだよてめーらはッ!もういい俺が行く!!』
『ダメですよ!神田が行ったらややこしくなるだけです!!』
『うるせぇッ!』
『ま、待て神田!』
そして誰かの荒々しい足音が遠ざかる。
『僕も行きます!神田だけだと心配なので!』
今度は慌ただしい足音が遠ざかって行った。
静かになった向こう側で誰かがポツリと呟いた。
『アレンと神田が行ったら火に油なんじゃ…』
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とりあえず書き留めておいたものを一話ずつアップしていきたいと思います!感想等は拍手でお願いします!!