06/11の日記
23:30
帝光バスケ部合宿一日目E
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帝光バスケ部一軍のバスが、パーキングエリアに止まると、バスの中からトイレ休憩のために部員が数名降りてきた。
その中には紫原敦の姿もある。
しかし、彼はトイレのためにバスを降りたわけではなかった。
「――あ。これ美味しそう」
店内に並ぶお菓子を見て回りながら、紫原は珍しいお菓子を見つけると、それを手に持つ買い物カゴへと突っ込んでいく。
カゴの中には、手頃なスナック菓子からお土産用の箱菓子まで、幅広く詰め込まれていて、今にも溢れ落ちそうだった。
しかも、そんなカゴが3つも紫原の手には握られている。
それをたまたま通りかかった一軍メンバーの一人が気付き、「ゲッ!?」と、驚きの声を上げると慌てて紫原の買い物を止めに入った。
唯でさえ、機嫌の悪いキャプテンを更に怒らせる……そんな、恐ろしい事態は避けたい。
「お、おい、紫原」
「んー?…なに?」
「あの、な?その…そんなにお菓子をたくさん買うのは不味いんじゃないか?」
「えー?…なんで?」
「いや…そりゃあ、そんなにたくさん買っちまったら、赤司から怒られるだろう?」
「……」
「だ、だから、このカゴのお菓子は減らすべきだと思うんだ…」
黙ってカゴの中のお菓子を見ながら考え込み始めた紫原に、部員はなりふり構わずに説得を続けていく。
この調子で買い物を続けたら、現地でお菓子を買えなくなるかもしれない。
それに、合宿帰りのパーキングでもお菓子を買いたいんじゃないか?
食べる機会は明日もあるから、今回は買う量を減らすべきだ。
赤司からも注意を受けているだろう?
紫原は、その部員の説得を不服そうに聞いていたが、なかなかカゴの物を元の場所に戻そうとしない。
どうしたものかと部員が悩んでいると、なかなかバスに帰ってこない紫原達を捜しに赤司が店内に現れた。
「――敦?」
「ヒッ!?あ。キャ、キャプテン!」
「あ。赤ちんだー」
「まったく…お前は何度注意すれば学習するんだ?」
紫原の手元の菓子に気付いた赤司は、ため息を吐くとその手からカゴを取り上げた。
「あ」
「買うならせめて、カゴ1つ分まで減らせ。この量は買い過ぎだ」
そう言って、赤司はカゴの中のお菓子を元あった場所へとドンドン戻していく。
その様子を紫原は未練タラタラに見つめていたが、カゴの中身が半分になった時、赤司の手がピタリと止まった。
そして、何故かカゴを床に下ろすと残りの二つも慎重に確認していく。
突然の赤司の不可解な行動に二人は首を傾げたが、すぐに赤司は紫原を振り返り、頭痛を堪えるような険しい表情で告げた。
「敦…今度からカゴに物を詰める時は、箱菓子とスナック菓子は別々に入れるようにしてくれ……これじゃあ、買い取るしかないだろう?」
赤司は、3つのカゴ全ての下半分に詰められていた袋菓子と箱菓子の惨状を紫原に見せると、黙ってそのカゴを紫原に渡して精算をうながした。
〜既に手遅れ〜
「おい!?紫原!!なんなのだよ、その菓子の山は!?」
「買ってきたー」
「違う!俺が聞きたいのは」「ミドちん、ちょっと置場所ないから置かせてー?」
「なっ!?」
ドスッ!
「グハッ!!…そ、そこは腹部なのだよ!」
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