06/24の日記

18:05
帝光バスケ部合宿一日目《夜の章@》
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『飛翔館』

T市にあるこの旅館は、帝光バスケ部が年に数回訪れる合宿地の一つである。

すぐ傍に体育館設備もあるため、多くの団体客が受け入れられるように部屋数も用意されていた。

また、施設の中も充実している。


特に、温泉の種類と効能も様々だ。

露天風呂、サウナ、クールサウナ、ジェットバス、滝湯、壺湯、腰掛湯、寝湯、水風呂、洞窟風呂、気泡湯、歩行浴。

その中で、地獄のような扱きの練習を終えた帝光バスケ部一軍メンバーは、思い思いで湯に浸かっていたが…


カポー…ン…


「「「「「………」」」」」


大浴場には静かな沈黙が漂っていた。

その理由は、練習による筋肉疲労にある。

なので、黒子は口元まで体を沈めて、
黄瀬は露天風呂の縁に頭を載せて横になり、
緑間は岩に背を寄りかからせて目を閉じ、
青峰は岩の上に胡座をかいて座ったまま空を見上げ、
紫原はゴムでまとめた髪の襟足まで湯に浸かり飴を舐め、
赤司は凝り固まった筋肉を軽くほぐしながら黙って目を瞑って湯に浸かっていた。


「……滅茶苦茶疲れたっスね〜」


しばらく続いた沈黙を、黄瀬が破って他の五人に話しかける。


「まぁ、いつも練習はこんな感じだけどな…」
「そうだな…今回変わったところがあるとすれば、監督のゲームが途中あったくらいなのだよ」
「…緑間くん…今その話は止めてください」
「……ヤな味思い出したー」
「ふん…随分軟弱なのだよ」
「いや…あれはさつきの料理並にヤバかったろ」


それに、お前も飲んでから便所に駆け込んだよな?


黒子と紫原の非難の声を馬鹿にする緑間に、青峰は軽く突っ込んだ。


「確かに……初めて桃井さんの料理を見た時は、僕もひきました」
「アレは絶対口にしてはならないものベストスリーに入るっスね!」
「…ちなみに、聞くけどよ…ベスト3に入る他の2つってなんだ?」
「毒物と刺激物っスよ」
「あー…上手い、黄瀬ちん」
「……流石に、それは言い過ぎだと思うが?」
「え?でも、赤司っちも桃っちの料理はヤバイと思ったから、情報収集専門にしたんスよね?」
「……いや、あながち間違ってはいないが」


それ意外にも理由はあるのだが、何故か強く否定することは出来ず、赤司は言葉を濁して視線をさ迷わせた。

赤司も、最初は桃井の料理を改善しようとしてみたのだが…最終的には桃井による被害の拡大を危惧して、今はその作業から桃井を遠ざける形になっていることは事実だ。


「なぁ?ンなことより、折角色んな温泉があんだし勝負しねぇ?」
「勝負だと?」
「んー…商品は出るの?」
「面白そうっスね!」
「楽しそうではありますけど…」
「…僕は嫌な予感しかしないんだが?」


十人十色の反応に、青峰はニヤニヤとした笑みを浮かべると勝負内容を決め始めた。


「最初はクールサウナで我慢比べ!んで、次にサウナな?商品は風呂上がりの飲み物を奢る!」
「ねぇねぇー、2回勝負ならアイスとかつけないの?」
「お前は…その程度の景品でオレが勝負に参加すると思ってるのか?」
「勝負から逃げてぇなら参加しなくてもいいぜ?」
「…誰が逃げると言った」
「なら、参加な?」
「俺も参加するっス!」
「僕もやります」
「…僕は止めておこう。万が一、何かあったら困るしね」


その変わり、審判役は請け負うよ。


赤司がそう言うと、青峰は「ンじゃ、決まりだな!」と笑って、座っていた岩の上から飛び降りた。


そして、露天風呂の中心に着水。

……周囲のメンバーの顔面にお湯を浴びせかける事となった




〜飛び込み厳禁〜


「青峰っ!!」
「あ、青峰っち!もう少し考えて下りてきて欲しいっス!」
「あ。悪い!」
「ゲホッ、ゴホッ!」
「テツヤ、大丈夫か?」
「…背が低いって大変だねー」


背も座高も高くて少ない被害で済んだ紫原は、のほほ〜んとした顔で新しい飴を口に放って噛み締めた。

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