〜施設レストラン内〜
帝光バスケ部の部員達は席に座り、バイキング形式の朝食を各々自由に取り分けて食事を摂(と)っていた。
そんな中、主要なレギュラーメンバー6人はレストランの中ほどでもそもそと箸を進めていく。
「黒子っち、本当にそれだけで足りるんっスか?」
「足ります」
「このチキンサンド美味しいっスよ?」
「そうですか」
「俺のを一つ食」「食べません」
「おい、紫原」
「?…なに?」
「そのミートボール上手そうだけど、どこにあったんだ?」
「え〜…覚えてない」
「そのミートボールなら、先ほど品切れたのだよ」
「マジか…そんなら、紫原それ一つくれよ」
「ヤダ。これは俺のだし」
「まだ結構あんじゃねーか。一つくらい良いだろ?」
「ダメ」
「……」
朝からガヤガヤ騒ぐ5人のメンバーの横で、赤司は一人静かに味噌汁の椀へ口を付けた。
(……出汁が薄い。その代わり塩分濃度が高いな…)
手厳しいカロリー計算の元、赤司は味噌汁の他にも、焼き魚、酢の物、サラダと和食中心のメニューを食べ進めていく。
しかし、そんな赤司のお膳(ぜん)のすぐ傍には、彼に似つかわしくない緑間のラッキーアイテムが静かに…いや、ある意味ハッチャケた格好で鎮座していた。
そう…
最近有名になったあの“ゆるキャラ”の果物妖精が……
「「「「……」」」」
同席しているメンバーは、ソレと赤司のツーショットに恐ろしく違和感を感じながらも、これから始まる練習のために食事の手を止めることなくやり過ごしていた。
ところが、そんなメンバー達の気遣いに気付くことなく近付いてきた人物がいる。
「…相変わらず朝から元気だなぁ、お前ら」
少々口先の尖ったアヒル口の少年。
彼は朝食の載った盆を両手に持ったまま、ニヤニヤと笑みを浮かべて近付いてきた。