「…ご心配をお掛けしてすみません、虹村主将。昨夜は少し羽目を外しすぎました。今後は帝光生として恥じない行動を心掛けるように、時と場合を省みるように努めます。申し訳ありませんでした」
手にしていた箸を膳に置き、その場で粛々と頭を下げて謝罪する赤司の動作と謝意に内心感心した虹村は開きかけていた口を閉ざした。
彼等がサウナで倒れた事については、先ほど監督とコーチから合宿の詳しい練習メニューを確認していた際に笑い話の一つとして聞かされた為、あまり深刻な事態にはならなかったのだという事は理解している。
しかし、それでも部の主将として釘を刺しておこうと思っていた虹村はこうして朝食を摂る彼等の傍へ来たわけだが……
先んじて丁寧な対応で謝意と反省を述べられては、これ以上叱る必要性も感じられない。
説教の出鼻をくじかれた事も特に気にはならなかった。
むしろ、監督が叱る必要性はないと言っていた手前、これ以上自分が口煩く言い含める必要もないのだ。
そう思うと何故か少し小っ恥ずかしさを感じて自身の頬を指先で小さく掻く。
しかし、このまま引き下がるのも何となく締まらないため、借りてきた猫のように大人しく縮こまっている5人組へ視線を向けた。
「…今回は監督も非があるから多めにみるが、次やらかしたら承知しねぇからな?」
最後の一言に念を込めてにこやかな笑みを浮かべた鬼主将に、顔を青ざめさせた彼等はこくこくと無言で頷いた。