「…さて、それでは早速練習を始めよう」
昨夜の大人げない勝負を提案した人物とは思えないほど大人びた笑みを浮かべた帝光中の白金監督は、朝食を終え一通りのウォーミングアップを済ませた部員たちの前に立つと、傍に控えていた真田コーチに合宿二日目の練習メニューを手渡した。
メニューを受け取った真田コーチは上から順に練習内容を発表していったが、最後の文字に視線が移ると明らかに動揺の色を瞳に浮かべ、白金監督の真意をうかがおうと視線を向ける。
しかし、白金監督はその視線の意図を理解していながらも変わらぬ笑顔のまま、真田コーチが読まなかった最後の練習メニューを発表した。
「最後は飛翔館キッチンを借りて夕食作りだ。調理のグループ分けは今日の練習メニューをこなした順にくじを引いて決め、ここに準備している食材カードから3つを選ぶ」
「え…食材、カード?」
「グループ分けって…」
「今日の夕飯は自炊…って事か?」
「いや、”あの”練習メニュー終わりに料理とか無理だって。腕も上がらねぇくらい疲れんのに…」
先程まで読み上げられていた地獄の練習メニューによってスタミナが枯渇するであろう後に、料理などほぼ作り慣れていないような中学男子が作る夕飯を食べるなど一体なんの罰ゲームかと思うが、彼らは次の監督の言葉に満場一致で賛成せざるを得なかった。
「ふむ……もし、練習後の夕食作りが苦のようなら、練習で動けない部員の分はマネージャーを早めに切り上げさせて調理してもらうが」
「「「「「……」」」」」