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□「言わねぇと…分からねぇだろ?」
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「そうだ、島原に行こう」





近藤局長が突然の事にそう言い出したので、俺も総司もその場に居た 全員が驚き、あたりはシンと静まり返ってしまった。




口火を切ったのは、この場では一番早くに冷静になった左之だった。




「いきなり如何したんだよ近藤さん。そりゃあ行ければ凄くいいが、 何でまたそういきなり…」



そう言いながら左之はチラリと副長の様子を伺う。



近藤局長は、副長のことを気遣ってこういう風に何かと話題に託け て副長を何とか文机から離したいのだと、以前から仰っていた。




今回も副長を慮っての事だろうと周囲は分かってはいたのだ。




「お前らたちだけで行け。俺はまだ仕事が残ってるからよ…」



当の本人の土方さんは興味がなさそうにそう局長に言うと、そそくさと広間から出ようとなさった。




「待て、トシ!」




近藤局長は土方さんを止めると、何でも良いから理由をつけて、とに かく全員ではないとダメだと言い張る。






「…分かったよ……」


ついに根負けした土方さんが周囲を見渡して。






「テメェら…よっぽど俺に仕事をさせないつもりだな…」




そう呟いた後

「さっさと行くぞ…」





そのまま踵を返して一度部屋の方に戻っていった。



土方さんが部屋に戻っていくのを確認すると




「何とかうまくいったな…」




左之が呟いて平助や新八の方を見る。


左之が言っていたのは、土方さ んをうまく言い包めたという事だったのだが、二人は何を勘違いした のか。




これで今日は懐の心配をしないで酒が飲める。





や、久しぶりで 皆と酒が飲める。 といった楽観視だった。














島原の角屋に着くと、早速左之達は当初の目的である。





土方さんを休めるというのを忘れているようだった。






酒の準備が出来、左之達はドンチャンしながら飲んでいるようで、総 司は近藤局長のところで話しながら飲んでいる。







以前から知ってはいたのだが、近藤局長は酒に弱いらしく、飲むと いっても、弱い酒ばかりだ。





しかし、近藤局長より群を抜いて酒に弱いのが俺の隣に居る土方さん だ。






既に土方さんは手酌で飲んでいた一杯の酒で、顔は既に真っ赤になっ ていた。






「土方さん、大丈夫ですか?」





俺は土方さんの様子を伺うと、そのまま何も言わずにもう一度酒を自 分で注ごうとする。






「土方さん、俺が…」





俺は土方さんから徳利を奪うと、酌をする。





「………」





土方さんは何も言わずに次々と酒を煽っていく。




が、何も言わなかっ たのが段々と口を開いて。






「斎藤、もっと強い酒はねぇのかよ」






「いえ、今飲んでいるのが、角屋で一番強い酒です。」





「何でこんなに水みてぇなんだよ」





段々と、土方さんの目元が座ってきて、周りで様子を伺っていた。



新八や平助、左之達が少しずつ焦っている様だった。






「土方さん…そろそろ休んだ方がいいんじゃねぇか?」



左之が気を使ってくれて、そう土方さんに問いかけるが。



「何だよ…嫌味な副長とは一緒に飲みたくねぇのかよ」





どんどん卑屈になっていっている。





「いや、そんな風に思っちゃいねぇよ」





酷く困惑しながら左之は言う。





「個室用意してもらうからよ、斎藤、土方さんを連れて行ってくれ」






新八も助けに入り、角屋の番頭に部屋の準備を頼みに部屋を出て行っ た。






「新選組副長は、隊士と飲んじゃいけねぇのかよ!」





「副長落ち着いてください。」




土方さんはそういいながら俺が持っていた徳利を乱暴に奪うとそのま ま一気に飲み干した。





「土方さん、あまり無茶をしてはいけません」






俺は何とか土方さんをなだめた後、肩を担いで部屋を後にし、新八が 用意してくれた個室に入った。







土方さんはそのまま部屋に用意してくれた布団に倒れこむ




「土方さん大丈夫ですか?」





俺は慌てて土方さんの倒れこんだ布団に膝をついて様子を伺う。





すると土方さんは起き上がり、首の所に腕を絡ませて乱暴に俺を倒し、組み敷いた。





「なっ……土方さん」





俺は驚いて土方さんを見るが、土方さんは気にせず俺の着物を脱がそ うとする。





「ひ、土方さん!」





少々声が上擦って呼びかける、すると土方さんは俺の方を見て




「何だ、その顔は…」






一体どんな顔をしているのか、俺にはさっぱり分からない…




小さく煽るなと言い、眉間に皺を寄せてそう笑って見せると、ゆっ くりと右手で俺の裾の間に手を入れていく





「あ…」





急に太腿の所をなぞる様に触られて、思わず震えてしまう。





「何だ、感じるんじゃねぇか…」





身体は正直だな、そう言い襟巻きも取られ、それを使い両腕を縛られ る。






何とかして緩めようともがくが、今度は帯を解かれ、その帯で口を塞 がれる。






着物が当然のごとくはだけ、胸元から褌まで丸見えだ。


恥ずかしくて 何とかして逃れようとするが、土方さんがそれを止める。




褌も外され、もう自分の前に遮る物が何も無くなってしまった。





「何だ、斎藤、何か言いてぇことがあるならはっきり言えよ、そんな んじゃ分かんねぇよ…」






土方さんが口を塞いでいるのに話すことが出来ないのを知っているの にそんなことを言う、すると土方さんは口を塞いでいた物を外して、 言葉を発する前に口付けを落とす。







「ん…ふう…」






憧れていたが、土方さんとはこういう様な関係になりたいと願ったこ とは無い




それでも必要とされているのが嬉しいが、 これは酒に酔っているわけだから、誰でもいいのだろうか…







自分で思って自分で傷ついている、情けない…




「ん…あっ…」





途中で離される唇の隙間から、僅かながらも声が出る。




恥ずかしくて 俯きながら土方さんの様子を伺うと、 反応を楽しいでいるのか俺を見て笑っている。







しかし、そのときも束の間で、何度も何度も深い口付けを落とされ る。





土方さんがもう一度俺の太腿に触ると、さっきの口付けで身体が敏感 になっているのか





「あっ…」






女にも近いような声で、思わず声に出すほど感じてしまった。






しかし、土方さんはそれも気にもせず、そのまま俺の…



それに触って… 一瞬だが、先端が触れられたのに感じてしまい、 先端からは白濁な物が出てきている。






「やめ、土方さん…」


「どうした斎藤…本当にやめて欲しいのかよ…」







挑戦的な目をして、挑発している土方さん… 今ここで止められると、正直に言ったらつらい…





しかし、副長と…






「しょうがねぇな…」






土方さんは諦めた様にして、そのまま俺の横で背を向けるようにして 寝転がる。






目を閉じて寝入ってしまうような気がした。



けれど、土方さんは酔っていたとしても、その記憶だけはよく残っ ていらっしゃる…





もしこのまま土方さんの要求を断ったままだったら…





「土方さん…」





そっと俺は縛ってある手首ながらも、土方さんの背中に触って起きて いるかどうか確かめる。






しかし、少し触っても土方さんは反応してくれない。





思い切って土 方さんの背中にそっと寄り添ってみて、着物をギュッと掴んでみる。





「土方さ――」






もう一度呼びかけると、土方さんはいきなり俺の手首を逃げられない ようにもう一度頭の上に持っていく。







「どうしたんだ、斎藤…」





彼は俺と向かい合うようにして寝転がり、耳元で囁かれた。




「どうして欲しい…」

「……ん……」










「いわねぇと分かんねぇだろ…」

「あっ…」














「…………」

「……して…」






「うん?」








俺は、土方さんの耳元で小さく応えた。










結果はどうあれ、要求したのは俺自身だ。






そのことで悔いることはない。



しかし、土方さんと一線を越えてからは、俺の中で何かがはじけた気 もする。





悩むのも多かった… だが、今ハッキリしていることが一つだけある。





それは、俺は土方さんのことを好いているということだ…
 

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