長編集

□声なき声に2(仮)
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そうすると、私は一度粒子化したはずなのだ




でも、そんな事が起こった記憶がない……




どこかで私は変なことをしてしまって、タイムスリップしたのだろうか?






ならば、一体どこで……












日が傾いてしまったのか、辺りはすっかり薄暗くなってしまった。




「足袋を履いていない場合、外から帰ったら必ず足は洗うように」





《はい》




軽く頷く事で返事をする、式台に座って玄関に置いてある桶に手を伸ばして
掛けてあった手拭で丁寧に洗う







斎藤さんも一緒にもう一つの桶に手を伸ばした。



そうして、二人して草履を脱いでから桶で足を洗っていると







「おかえり、随分と早い逢引だったね」








「だから…違うと言っている」






総司が別の手拭で手を拭いている斎藤さんの肩に手を乗せていると






斎藤さんは総司の手を軽く振り払った。





《仲が良いね二人とも》





斎藤さんのほうも嫌そうに言っているけれど




その声音に棘が無いから、総司のことを嫌っているわけではなさそうだ。






「……だったら一君、僕と逢引する?」




《えっ?》




総司が再び斎藤さんの肩に手を置いて、自身のほうに少し斎藤さんの体を引き寄せると





斎藤さんの耳元で、私に聞こえるか聞こえないくらいの音量で囁いた。






《これは…もしや》





新選組のみならず、武士の中では流行していた。






衆道





《新選組の衆道話は映画にもなったけれど…沖田総司は》





衆道っ毛は無いはずだったんだけど






《これはこれでアリかもしれないな……》




故・永倉新八が残した著書に「斎藤は無敵の剣、総司は猛者の剣」





と表していたほどだから、他の隊士だと相手が務まらなかっただろうな……







そうなれば、きっと試合も二人でよくしていただろう



ならば、友情から愛情へと変わっていってしまった……なんて









「おい、鬼藤何を考えている!!」




斎藤さんが私が考えていることを察知したのかすかさずツッコミを入れられた。





耳元で総司の笑い声が響いて斎藤さんがしかめっ面している





「ちょっと、何笑ってるの?」





声に出て無くても分かるよって総司に言われて
















初めて此処に来て笑っている自分がいた。
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