ときメモGS3 (小説置き場)

□recollection
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「はい、どうぞ、零一さん。」
「ああ、ありがとう。」

仕事でお疲れの様子の旦那さんに濃いめのコーヒーを淹れてあげる。

「まったく、大迫先生のクラスには世話を焼くよ。」
「ん?また桜井兄弟がなにかしたの?」

私の母校、はば学で教師として働いている零一さんはこうしてたまに学校のことを話してくれる。今年入学した新入生にもなかなか手を焼いているみたい。

「ああ、まったく。いつから黒板消しおとしはうちの伝統になったんだ?」
「ふふ、まだやってるんだ。私が学生のときに始まってすっかり伝統になったんだね。」
「まったく、君たちにも手を焼いたもんだよ。」

懐かしい日々が蘇る。私もいろいろやんちゃしたもんね。

「君に似た生徒がいるんだ。」
「私に?」
「そうだ。何にでも一生懸命で他人の目をひいてしまうような生徒だよ。少々、見ていて危なっかしいが。」
「でも零一さんも目が離せないんでしょ?」
「そうかもしれないな。」
「その子に恋しちゃダメですよ?」
「なっ…。」

零一さんが飲みかけのコーヒーをこぼしそうになる。
私と零一さんも生徒と先生の関係だったんだもんね。

「もう、冗談ですよっ。」
「そうか…。」

クイッとメガネをあげて冷静さを装うけど、まだちょっと動揺してるの知ってるよ?

「会ってみたいなぁ。」
「ん?」
「その私に似てるって女の子。」
「あぁ、もうすぐ学祭があるから来るといい。彼女も吹奏楽部に所属しているから一緒に演奏する。」
「わぁ、久しぶりにはば学に行くの楽しみ!!」

最近の零一さんは疲れてるみたいだけどとってもやりがいを感じているのは素敵な教師や生徒に囲まれているからかな?学校のことを話す零一さんの顔はいつも楽しそうだから。

新任で頼りないけど、熱血で生徒からの信頼もあるっていう大迫先生。
近年稀にみる優秀でマジメな生徒会長くん。
「私にもプライドがあるからな、もう学校ではピアノは弾けない」と零一さんに言わせたピアニストの卵くん。
たった1人で柔道部を立ち上げて頑張っている子。
いつ問題を起でもっておかしくないっていう桜井兄弟。
でもお兄さんは弟思いの優しい子で弟くんはすごい数学の素質を持っているって。
そして私に似た女の子。

学祭でみんなに会えるかな?
私がそうだったようにみんなはば学で、勉強してクラブして遊んでそして、恋をして…。

なんだか私まで昔に戻った気分。

私は零一さんの隣に座り頭を肩に預けた。
「零一さん、大好き。」
「どうした、いきなり?」
「はば学の話してたら、自分が高校生だったときの気持ちを思い出しちゃって。あの頃は生徒だったから気持ち伝えられなかったけど、今は私の旦那様だからしっかり伝えなきゃって。」
「ったく、君は…」
「零一さん、愛してます。」
「あぁ、私も愛している。」

そして零一さんはあの頃と変わらない甘くて少し大人なキスをくれました。

私たちみたいにはば学で出会ったみんなが素敵な恋ができますように…




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