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□泥土
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「ねぇ、君ってどんなヤツがタイプ?え、優しいのがいいの?へーそっかー」

クラブに出向き、適当な女の子に声をかける。
愛想を振り撒くのはみんなが思っている以上に簡単で。
合コンなんかより、一人の子を狙った方が楽っていうのは経験上確かだ。

「うん、いい店知ってるんだ。おごるし、今から行こうよ」

この子もちょろかったな。
こんなのにホイホイ引っ掛かるようじゃ行き先不安だね。
ま、過去の勲章にでもするといいよ。

「さ、出よう」

誰にも見つからないように。

席を立つ瞬間にそっと囁く。
我ながら完璧。
ご覧よ、目がハートになってる。

「スンリ」

後ろから肩を捕まれる。

あれ?ここはまだ大丈夫なはずじゃなかったかな。

誰がどんな顔してるかなんて、振り向かなくっても分かる。

「ごめんね、ちょっと掴まっちゃった。また今度遊ぼう」

呆気にとられるあの子を置いて店を出る。
まるで銃を突きつけられたみたいにただ前だけを見て歩く。

そのままどこまで歩けばいいか分からなかったけど、振りかえる気には到底ならないね。

ある路地までくると俺の肩を掴んでいた腕が俺を路地の壁に叩きつける。

「っ」

肩の骨がミシミシ言ってるんで、離して欲しいな。

「ヨンベヒョン」

「・・・」

険しい顔の彼は一言も発さない。
肩を掴んでいた腕が離れ、俺の顔の横に勢いよく突かれた。

「・・・っ、何でここが分かったんですか?」

「お前がしそうなことくらい分かる。」

舐めるな、と言わんばかりに睨まれる。

「あーあの子可愛かったのに」

惜しいことしたなぁ

「・・・」

「冗談、です」

ヤバイ。
このままだと殺される。
いつものノリを盛大に悔やんだ。
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