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□Say See You !
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1.スンリ


「はあああ」

「幸せ逃げるんじゃない?ただでさえ少ないのにそれ以上減らすの?」

やるせなくって盛大についたため息をテソンヒョンにばっかじゃないのと言わんばかりにとがめられる。

「いいじゃないですか」

「まあべつにいいけど」

「テソニヒョンもため息つきそうな顔してますよ」

「え、嘘だあ」

「ホントです」

あわてて顔を抑えるテソンヒョン。
さっきまで本当にヒドイ顔でしたよ。

「疲れてるんじゃないですか?」

「スンリヤに言われたくないかな、そんな酷いクマなのに」

これはどうしようもうもないんですってば。
と、言いたいところだけど最近酷いのは確かかも。

「悩みでもあれば聞きますけど」

「スンリヤこそ」

「いや、俺は…」

「俺だって…」

お互いになんとなく言い出せない空気が漂う。

しばらくの沈黙が下りた後、どちらともなく口を開く。

「「…どうせ、知ってるでしょ?」」

あら、ハモった。

「…タッピョンのことですか?」

「…ジヨニヒョンのことだろ?」

「なあんだ、お互い知ってたんじゃないですか」

「みたいだね」

ハハハ、と乾いた笑いが空しく響く。

「お互い報われませんね」

「ほんとに、ね。ていうか何で知ってたの?そんな分かりやすい?」

「いえ、ただこの前、その、」

「言えない?」

「・・・ヒョンが泣いてるとこ見ちゃって」

「え」

ヒョンがフリーズする。
そりゃそうだよなあ、声を押し殺して泣いてるところなんて見られたくない。

「す、すみません。誰にも言ってないですから、安心してください。」

「・・・ありがと」

「ヒョンは何で知ってたんですか?」

「えー、勘」

勘?
勘で当てられちゃったの?俺

「本当ですか、ソレ?」

「勘というよりは、いつも見ててなんとなく思ったって感じ…かな」

「鋭いんですね」

「そうかな」

そうですよ、こっちはばれないよう必死なのに。

「スンリ、タッピョンはジヨニヒョンのどこに惹かれてるんだと思う?」

「え、それ俺に聞くんですか」

「だって、もう俺よく分かんなくなって来ちゃって」

だから、とヒョンの視線が俺を急かす。
この人はどうして自分を苦しめたいのかな

「・・・ヒョンは、ジヨニヒョンは、きれいで、かっこよくて、繊細で」

「うん」

嗚呼、今確かに俺の一言一言がヒョンの心を抉っている。

それでも、ヒョンは俺の話を止めない。むしろ促すように相槌を打つ。

「意地悪だけど、優しくて」

「うん」

「……特に、自分の愛する人を、大切に、大切にするんです」

そこまでやっとのことで言いきって、ヒョンを見るとなんとも言えない顔をしていた。

俺とは違って懸命に現実を見ようとしてるんですか?

可哀そうなヒョン。
そりゃ現実からは逃げられないですけど、それでも、夢見るのは自由じゃないですか。
どうにもならない現実なんて悲しいだけじゃないですか。


俺はそんなの嫌です。

自分の都合の悪い物は見たくない。

そう、だから、俺は彼の首についている跡だって見えないんです。


『現実にさよなら』
(見えないんだって、そうだよ、俺はそんなもの見えてない)
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