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□Lip
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テソンは俺が煙草を吸うのを嫌がる。匂いと喉に悪いって言うのが理由らしい。

普段から結構注意されるけど、また忘れて吸ってしまう。
俺がただ注意しただけじゃ聞く気が無いことにとうとう学習したらしい。

俺の部屋で二人きりで待ったりくつろいでいる時に、うっかり俺がたばこに火を着けたのを見て、テソンは黒いオーラをまといにっこりとほほ笑み俺に近寄ってきた。

ああ、まずいなあと思いつつも、消す気にならない。
だってもったいない。

「知ってます?煙草一本吸うごとに5分寿命が縮まるらしいですよ」

テソンはにこにこしたまま話しかけてくる。
その雰囲気をなんとなく察してはいるけど、わざと視線をそらしたまま目を向けない。

「じゃあ俺は絶対早死にするね」

「僕より先に死なないでくださいよ」

「テソナを看取るなんておことわり。俺が死ぬとき盛大に泣いてもらうんだから」

「違いますよ、泣くのはアナタです」

ぱっと煙草を取られ、怨めしそうに灰皿に火種をぐりぐり押し付けるテソンを見ている。
こちらを向き直ったテソンは無言で手を差し出す。

無言の圧力が俺を責め立てる。
分かったよ。

お手上げ、降参。という意思を示し、煙草の箱を渡すとぐしゃりと握りつぶされた。

「俺の楽しみなのに」

その箱に残っていた煙草分くらいの嫌みを言わせてもらうくらい許されるだろう。

「楽しみくらいいくらでも補ってあげますよ。だいたい、こんなものにあげる5分なら僕に下さい」

流れるような動きで、キスされた。
いつもなら頼んでもしてくれないのに珍しい。
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