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□天の邪鬼
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「遅かったね」

玄関先で靴を脱ぐタッピョン。
こうやって玄関でお出迎えすると新婚夫婦みたい。

ただ新妻がお出迎えするには時間帯がおかしい。
今深夜どころか明け方だぞ。

そこんとこ分かってますか、お兄さん。

「うん、ちょっと色々」

悪びれもなくけろっと答える男前。
何しても絵になるから余計に腹が立つ。
ちょっと理不尽?

「色々、って何」

「…なかなか帰してくれなくて」

そりゃね、俺だって仕事の付き合いで飲みに行かなきゃいけなかったことくらい分かってるよ?
・・・そもそも、帰したくないっていうか、帰せなかったんだろう。
だってまだ顔真っ赤だし、絶対まだ酔ってる。

「どうせキャバクラとかで、セクシーなお姉さんに『お兄さん、カッコいい』とか言われて調子に乗って飲んでたんだろ」

あー、こんな若いイケメン格好の餌で見るも無残にケバイ化粧の女どもがわらわらよってくるんだろう。想像に易い。
想像なのに不快感がぬぐえない。自分の想像なのに。

「言われたけど、全然いい子いなかったし。あんまり飲んでない」

この馬鹿男…。
そこは嘘でも言われてないとか嘘つくとこだろ…

…いい子いたら飲んでたのか。

「あー、もういいよ。俺寝るし」

アホらし、何で俺健気にヒョンの帰り待ってたんだ。
寝れば良かった、明日仕事だってあるんだ。

「待って」

腕を掴まれ、睨みながら振り返る

「何」

「今まで起きてたってことは待っててくれたんだろ?」

「違う、眠れなかっただけ」

「嘘だ」

そうだよ、真っ赤な嘘だ。

「それに、」

「ああいうの安っぽい女に言われるより、ジヨンに言われる方が100倍そそるんだけど」

「…うー、この気障男」

「俺にはジヨンだけ」

「ガリガリだし、胸も無いのに?」

柔らかくて胸のある女の方が良いに決まってる。

「細い方が好き、胸は…嫌いじゃないけど、そんなの興味無い。」

「ふーん」

「じゃあさ、ジヨンは何で俺がいいの?」

「えっ、それは…」

思わず言葉に詰まった。

難しい
顔がいいから?
無いこともないけど、そんなのだけじゃなくって…
なんて言えばいいんだろう多すぎて良く分からない。

「それとおんなじ」

「・・・滅茶苦茶言ってごめん」

「早く帰ってきてあげられなくてごめん、まさか待っててくれると思わなかった」

「なんとなく待ってたかっただけだし」

「うれしいなぁ」

頬に落ちたキスの感触ににやけながら、唇を指してねだってみる。

「こっちは?」

「もちろん」



『天の邪鬼』


(ああ、コレが流行りのツンデレか)

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