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□まどろむ
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少しお腹空いたな、でも昼食にするにはちょっと早いよね、なんて考えつふらふら歩くテソンに軽い衝撃が加わった。
ぼーっとしていたせいか曲がり角で誰かにぶつかってしまったらしい。

「あ!大丈夫ですか?」

慌ててあやまってその人を支えると

「ん、大丈夫。」

「ジヨンヒョン!?フラフラじゃないですか!」

全身をもたれかからせるように上の空の口調で返事をしたのはジヨンだ。
ラフなジャージとパーカに身を包んでいるあたり、アルバムの作成でもしていたのだろう。
よくよく見ると、濃いクマも見える。

「…ちょっと疲れた」

「また寝ないで仕事してたんですか?」

頑張り始めれば止まらないこの兄をよく知っているテソンはあきれつ言う。
テソンがしっかり受け止めているのをいいことにジヨンはずりずりとテソンに寄りかかる。

「だって…」

「だってじゃないです!体壊したいんですか?とりあえず、部屋に戻りますよ。」

食事もろくにとって居ないせいか、いつも以上に軽いジヨンをテソンは背負って部屋へ連れ戻す。
負ぶわれてゆらゆら揺れる感覚が心地良いのかうとうとしながらもジヨンは言う。

「…ごめん。」

「俺に謝るくらいならもうちょっと自分の体、大事にして下さい!」

まったくもう、とあきれ口調ながらも、やれやれといった様子のテソン。
少し安心したのかジヨンは腕をしっかりテソンの首にかけた。

部屋に戻ってベッドに下ろされるジヨン。
見上げるとテソンがちょっと心配した様な顔をしている。

よく分からないで見上げているとテソンはほらほら、とジェスチャーで促す。

「ほら、ヒョン」

「?」

「全然寝てないんでしょ?
寝るまでそばにいますから。」

傍にいなければまた寝ずに何か始めそうだ、と勘繰っているのか。
そう言いかけてジヨンは言葉を飲み込む。
これはチャンスだ。

「テソナは?」

「え、オレは寝ませんよ?」

まだお昼前ですし、多分寝れないです。

そうは言っているがジヨンにとってテソンが本当に寝てしまえるかどうかなど全く問題ではない。
自分がテソンを独り占めできるかどうかが最重要問題である。

「テソナも寝るんでしょ?じゃなきゃ俺寝ないから。
あと、俺から離れちゃだめだから。」

テソンの服の袖をひっぱっるジヨン。
彼なりのあざといアピールだ。
言う事聞いてくれなきゃ拗ねちゃうぞ、と。

「あー、はい。」

テソンはジヨンのそういうところもよく知っているから、もう此処まで来てしまえば仕方ない、と思う。
もちろん、それだけでは無くて、ヒョンが嬉しそうだからそれでいいかという心理でもある。

ジヨンが横に詰めたスペースにそーっと横になってジヨンを抱き寄せて囁くように言う。

「ヒョンはいつも頑張りすぎてるんですよ。……そういうとこが好きなんですけどね。」

「そんなことない」

違う違うというように首を振るジヨンをなだめるように軽く腕に力を込め。

「そんなことあります」

と、キスをしてさえあげればジヨンがずっと大人しくなることもテソンはよく知っているのだ。

『まどろむ』

(夢うつつ)

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