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□切望
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イヌたるもの御主人の命令には有無を言わずに従うもんだろ?

全く無茶苦茶なことを言う人だ。

俺としては可愛い猫ちゃんを可愛がってる方が得意なんですよ。

でも反抗はしない。
そりゃ、愉しいからに決まってるじゃないですか。

「今夜暇だろ?抱かせてやるよ」

たまーにかかるお呼びに尻尾を振ってお答えするのが俺のお仕事。

深夜に部屋を訪れる。

いつも通りベッドに腰掛けたジヨンイヒョンが俺を待ってる。

シャワー浴びてきますなんて野暮はナシだ。

「ん」

ほら、とばかりに突き付けられた御足の前に跪く。
仰せのままに、御主人様。

足の甲にキスを落とし、指先に舌を這わす。
少しくすぐったいのか、足が揺れる。
ジヨンヒョンの反応を盗み見しているのがばれてしまう。

「下手糞」

足の指で顎を持ちあげられる。
ああ、本当に俺ってイヌみたい。

「そういう高圧的な態度、ぞくぞくします。」

ダメだ、口角が抑えられない。

「本当にお前は物好きだな」

「どうせなら、もっと手ひどく罵ってくださいよ」

中途半端は傷つくんです。
それにそっちの方が興奮します、ね、ジヨン様。

「この変態」

笑顔のままの罵倒の報酬。
貴方様にとっちゃ安いものでしょう?


「その変態に絆されてるのはどちら様ですか」

「悪かったな」

ジヨンヒョンがベッドに寝転がるのが‘前戯はここまで’の合図。


本当にその通りですよ。
全部あなたのせいです。




ごめんなさい、ごめんなさい。

俺ね、あなたがすごく好きなんです。
あなたが俺のこと都合のいい性欲処理機程度にしか思っていないのは知ってるんです。

それでもね、俺にあなたを抱かせてくれる程度の価値があることが嬉しいんです。


「どうした?」

駆け巡った感情に躊躇して固まった俺にジヨンヒョンが問う。

「どんなふうに抱かせてもらおうかと思って」

俺が生意気言えば言うほどあなたは喜ぶんですよね。

「お前に主導権があると思うな、バーカ」

そうですね、
でも最後には‘好きにしろ’って言ってくれるの分かってますよ。

別にあなたが誰を想って俺に抱かれてくれてもいいんです。

だってあなただって‘変態ごっこ’そこそこ気に入ってるから。

だからね、俺はこの関係をね、悲観してないんです。
我儘なんて絶対に言いません。

だから、ジヨンヒョン。

これだけはお願いします。



貴方に触れる俺の手が震えていることに、どうか気付かないでください。



『切望』
(渇き切って涙も出ないんです。可笑しいでしょう)

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