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□酸素
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いつからかこの擦れた関係は続いてた。
初めは、酔っていたのかもしれないけど、そんなこと覚えていない。覚えていても仕方がない。
身体だけ、というよりは行き過ぎた恋人ごっこの方が正しいんじゃないか、と思う。
俺はタプヒョンが好きで、でも、タプヒョンは俺ではない人が好きで。
俺の想いは届かない。それはもちろん承知の上での束の間の夢。
溺れるのは楽しかったよ。
それでも、どうして好きでもない俺に好きだなんて嘘が吐けて、どうして愛してない俺にキスができるのか、たぶん一生解らない。
分からなくっても知らないふりさえしていれば、幸せだったよ。
もしかしたら、本当は、なんて何度夢見たか分からない。貴方は期待させるのはいつも上手かった。
俺、知ってるよ。俺を後ろから抱き締める時は誰かと上手く行ってない時なんだよね。
「好きだよ」
「俺も好きだよ、タプヒョン」
「好き」
「うん」
「好き」
実は涙目なんでしょ。泣かないでよ、俺まで泣きそうになるから。
「ジヨン、抱かせて」
「・・・好きにしなよ」
その想い人だと思って抱いてよ。
いつ終わってもおかしくない綱渡りを続ける俺は一体何なんだろうね。
ヒョンは知らないよね。
いっつも俺がどれだけ涙をこらえるのに苦労してるか。
でも知らなくていいよ、中途半端に優しいヒョンだから、きっと揺らいじゃうでしょ。
それくらいなら我慢してあげるからさ、お願いだからこの関係をやめないでね。
すごく苦しいけど、分かってもらえないと思うけど、苦しい中でも息継ぎみたいにすごく貴重で幸せな時があるんだ。
その味が忘れられないから、俺は何度だって暗い重い深海に飛び込むんだよ。
でもいつか限界は訪れる。
俺が力尽きるのかもしれないし、水圧に押しつぶされるのかもしれない。
「ジヨン」
「うん」
「どこにも行かないで」
「どこにも行かないよ」
「約束する?」
「もちろん」
でも、苦しむ時は一瞬にしてね
『酸素』
(得るか死ぬか)