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□吸血鬼
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「なあ、ジヨン」

「何?」

まだけだるい余韻が残る深夜のベッドでヒョンは俺の首に腕をまわして囁く。

「俺、実は吸血鬼なの」

「つまんない冗談」

くるっとした瞳で見てくるから
可笑しくってたまらない、みたいな顔で見てくるから
なんとなく子供みたいだなって思った。

「どうして?」

「日に当たっても、十字架も平気じゃん」

「そりゃある程度は平気さ、だって俺現代っ子だから」

含んだような、からかうような笑みが浮かぶ。
俺だって簡単に『へえそうなの』って言うほど素直じゃないよ。

・・・もしかして、吸血鬼だから必要以上に露出しないとか?
くっだらないと自嘲しながらタッピョンに向き直る。

「ふーん、それで?」

「信じない?」

「血でも吸わない限り信じないよ」

タッピョンが俺の肩口に顔をうずめる

「じゃ、吸っていい?」

「吸えるものならどうぞ」

柔らかい唇の感触。
強めに吸いつかれ、チリっとした痛みが伝わる

「まだ跡つけるの?」

さっきまで散々つけてたのにまだ足りない?

「んー?」

言葉ではない適当な反応の後、

「あ゛っ」

ぐっと歯が立てられる。
たぶん血が出ている傷口をなんども舌が往復する。
舌のざらざらした感触が痛みと混ざる。

「っ、いたい」

「あ、ごめん。」

でも、もうちょっと
って言われて許してしまうのは俺が甘いせいだろう。

「信じてくれた?」

ちょっと得意顔で聞いてくるヒョン。
いつもは見ない八重歯があったように見えて目をこする。
すぐ見えなくなったからきっと気のせいだと思う。
もしかしたら、なんて思った。
けどね、

「どっちでもいいよ」

「ん?」

どういうこと?と言いたげなヒョンの顔。
ちょっと拍子抜けした可愛い顔にキスをして、もう少し分かりやすく言ってあげる。

「タッピョンだったら、吸血鬼でもそうじゃなくてもいいって言ってるんだよ」

「ジヨンならそう言ってくれると思ったよ」

満足気に笑ってくっついてくる自称吸血鬼さん。

「でもヒョンが吸血鬼だったらいいね」

「どうして?」

「俺より先に死なないから」

冗談めかして言ったつもりなのにどうしてかヒョンは少し黙りこむ。
そしてちょっと言いにくそうなことを言う時みたいに、あーと口を開く。

「すぐには死なないけど、ジヨンが死んじゃったら俺も死んじゃうな」

「どうして?」

俺が死のうと関係ないじゃん?
後追いでもするの?

「愛してる人の血の味知っちゃったら、もうその人の血しか飲めないから」

少し寂しそうにつぶやくヒョン。

「え・・・?」

「気にしなくていいよ」

「ヒョン、本当に・・・?」

「最初に言っただろ?」

いつもよりずっと血色がいい唇をきゅっと上げ微笑むヒョン。
色の白い肌に落ちるまつ毛の黒い影。

「・・・」

何て言ったらいいか分からなくて黙り込む。

「大丈夫、ジヨンは何も気にしなくていいよ」

愛おしそうに俺の頭をなでるタプヒョン。

「・・・そんな寂しそうな顔しないでよ。」

そっとヒョンの首に手をかける
こうしてみるとしっかりしてるよね、って思う。

「ジヨナ?」

「俺が死ぬときは一緒に連れてってあげるから、さ」

「・・・今の話、どこまで本当でしょう?」

本当に楽しそうに嬉しそうに笑うヒョン。
ああ、なるほど

「・・・え、何、だましたの?」

「言うタイミング逃しただけ」

「ヒョンがあんな真剣な顔するからだよ」

「俺だって役者なのに」

確かにそうだったね
ちょっと見くびってた、ごめん

「でもちょっと信じかけた」

「ふふ、どっちかというとジヨンの方が吸血鬼っぽいかもね」

「えーそう?」

「冗談冗談」

しっかりヒョンにくっついて、ぎゅって抱きしめてもらった。
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